豊島逸夫の手帖

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スーパー ブルーディー

2008年2月6日

スーパー チューズディーはスーパー ブルーディとなった。ダウ370ドル(2.9%)の急落。Ugly(ヒドイ)!!

きっかけはISM非製造業総合指数が景気の分かれ目とされる50を大きく下回り、41.9へ急降下。同時多発テロ以来の急低下だ。ただでさえ米経済リセッション説が勢いを得てきた矢先ゆえ、これは効いた。マイナス成長説も台頭。

3月のFOMCにおける追加利下げありの予測が100%に。メリルなどは、それを待たずに緊急委員会が開かれ緊急利下げの観測も打ち出す。しかし、本来追い風であるべき利下げ観測も、市場を覆う不安心理にかき消された格好。

それは、いまやマーケットの底流となったモノライン問題が影響している。S&P、ムーディーズが、2-3週間内に債券保険業者の格下げに踏み切るとの観測。これが致命傷となって、implosion(金融危機=銀行倒産)などに発展する可能性が囁かれる。そもそもFRB1.25%緊急利下げの時点から、当局は我々が知らないヤバイことを察知しているのではとの疑心暗鬼状態の地合であった。

NY株の惨状を見るに、またまた金融株全滅。レーマンなど一日で4%株価急落。昨日紹介した資源株も全滅。BHP -4%、リオ -2%、中国アルミ -8%。

債券市場では、FRBが市場との心理戦に負け、さらなる利下げを迫られるとの認識から、2年もの(FFレート予測のベンチマーク)がついに2%も割り込み1.91%へ。イールドカーブはsteep(急勾配)になり、投資家の先行き不安を暗示している。

そして商品市場。原油安、88ドル。金も20ドル下げて887ドル。24時間のチャート(http://www.kitco.com/charts/livegold.html)を見ても、2月5日は極東時間では903ドルまで反騰後、一気に890ドル割れまで急落。その後、若干の反騰も見られたが後が続かず。完全な調整局面入り、とは昨日書いたとおり。

買い方が手仕舞い売りを急ぎ、momentum players(相場の勢いに乗る買い方)がとくに撤退。急落過程では、チャートポイントがヒットされるたび、ストップロスの売りが噴出する展開だ。

現在の金市場を冷静に分析すると、キーワードは、"金の二面性"と"デカプリオとリカちゃん"(本欄1月29日参照)の二つである。

まず、金の商品の顔を見れば、米国リセッション=リカップリング=中国にも波及の恐れ=中国バブル破たん、というストーリーが見える。これは売り材料。
対して、金のマネーとしての側面を見れば、さらなる追加利下げの動き、その結果としてのドル安、サブプライム長期化により質への逃避マネーが米国債と金へ流れる構造など、金にとっては追い風が吹いている。その相反するベクトルに引っ張られ逡巡する金価格。

昨日は、ISM指数が効いて商品としての金需要減退が懸念され投機筋が撤退となった。ただ、いずれ、マネーとしての金需要が高まることは必至。ここは下の図を見ていただきたい。

424.gif

この図で言えば、現在はブルーの部分が剥落している過程。昨年の2月の上海発世界同時株安のときにも同じ喩えを使ったが、ブルーが新雪、グリーンが根雪である。このところ多発している雪崩事故に喩えれば、新雪雪崩。マーケットのfroth(バブル=泡)が崩れつつある。問題は、金価格900ドルとして、何ドル相当かということだ。まぁ100ドル程度の新雪は積っていたと思う。一時は935ドルまで新雪が蓄積したことを考慮すれば、根雪の部分が露出するのは850ドル程度の水準か。

その落とし所のヒントのなりそうなのが、来週発表のWGC金需給四季報。800ドル水準でのインド、中国などの需要状況が数字で検証される。

なお、米大統領選挙は、まだ直接の影響なし。民主党=ドル売りなどという簡単な公式で測れる相場ではないから。この点は、近々じっくり検証したい。

2008年