豊島逸夫の手帖

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金ETF残高急増

2008年6月30日

金価格は930ドル近辺まで急騰。その推進力がNYの金ETF残高急増であろう。一時、利益確定売りで740トンまで減った残高が797トンまで急増。長期保有の現物買いが支えているので、足腰座った上昇と言える。

その背景は実に多岐多様にわたる。
―NY株はピークから20%以上下げたらベアー(弱気)相場入りという定義があるが、先週はついにそれを上回ってしまった。
―大手投資銀行の格下げ(今度はモルガンスタンレー?)、相次ぐ大型資本増強。
―住宅債権から、自動車ローン債権、クレジットカード債権への拡大。
―商業用不動産にまで波及(NYオフィス賃料2.2%アップ)。
―債券市場には質への逃避買い。
―ECBインフレ予防の利上げバイアス鮮明、ユーロ高、ドル安加速。
―FRBは原油高とサブプライム不況の挟間で身動きとれず。
―イランとイスラエル間の緊張の高まり(地政学的リスク)。
―そしてもちろん原油高、インフレ懸念。

米国市民の生活感覚でも、ガソリンスタンドに行けば石油高騰、スーパーに行けば食物高騰、挙句の果てにマイホームの価値は下がるばかり。自分は結構リッチだと思っていたのに、蓋を開けてみたら、自分の財産の本当の価値はたったこれぽっち?ということで不安感イッパイなのだ。

2008年第三ラウンドは、マネーが金に流れるような市場環境である。金ETF残高急増は、その兆しか。

―その他の話題としては、リーマンは9月17日にFRB特融の期限が切れるまでが勝負。
―今週は期末、7月4日米国独立記念日まえで取引は薄い内部環境。そこへ雇用統計が待ち構える。いかにも荒れそう。
―原油先物取引、原油インデックス投機に対する規制議論がワシントンでは急激に高まる。でも、NYとシカゴの見方は、もしマーケットに投機家がいなかったら 需要サイドも供給サイドも"カルテル"になってしまう。さらに、投機家は相場の長期トレンドは作れない。価格変動の方向性を増幅させるだけ、というもの。大統領選挙の候補者ディベートの論点にもなってきた。

さて、今朝はテレビ東京のモーニングサテライトに既に出演しましたが、今夜の日経CNBC特番にも出ます。東証金ETF上場特集番組。午後9時から30分。そしてテレビ東京クロージングベルにはステートストリートの盟友デビッドコリンズ氏が生出演。午後一時からの上場セレモニー直後に彼のところのSPDR金ETFの今後を語る。なお、水曜日(7月2日)の日経CNBC昼エクスプレス、スペシャルトークには筆者生出演。ここでも東証金ETFの特徴を説明します。

2008年