豊島逸夫の手帖

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米国防省高官 イスラエルのイラン攻撃示唆発言

2008年7月2日

昨晩、米ABCは、米国国防省高官発言として、イスラエルのイラン攻撃の可能性示唆の報道を流し、これが原油市場、そして金市場にも影響を与えた。金価格については930ドルの上値抵抗線を突きぬける要因になったといってよいだろう。とくに、今回の観測の根拠として、イランが防空システムをロシアから購入という材料がある。

先月にはNYタイムズが、イスラエル軍の地中海に於ける大規模演習を"イラン攻撃のリハーサル"として報じたばかり。今週のロンドンエコノミスト誌も、"イスラエルの挑発はbluff(こけ脅し)ではない"と書いている。

タカ派で知られるボルトン元ブッシュ政権高官は、やるなら、米国大統領の引き継ぎ期間と推測する。大統領選挙に影響を与えたとの誹りを免れる時期であり、しかも、新大統領の決断を待たずに出来る時期でもあるからだ。ちなみに、オバマ氏は米イランの対話路線を主張。

次は中国で、さらに膨張する"熱銭(ホットマネー)"流入の話。今年1-5月ですでに2000億ドルの熱銭が中国国内に流入したと推定される。その間、同国の対外支払準備も、2690億ドル急増。これは昨対で20%増。その総額はついに1.8兆ドルと2兆にも迫る勢いだ。今回の外貨準備急増は貿易収支黒字より資本収支によるところが大きい。

熱銭の流入経路は、例えばヘッジファンドが中国サイドのパートナーを経由しておカネを入れるとか、居住者一人当たり年間5万ドルまでの海外からの送金を友人などの名義を使うとか、香港居住者は1日11,600ドルを中国本土に送金でできるなど、多岐に亘る。

問題は、この過剰流動性が何処に行ったか。株式は急落中。不動産、金には若干流入続く。しかし、その大半は利息4%前後の人民元預金口座。これほどに熱銭流入が蓄積すると、アジア経済危機の時のように、一斉に引き揚げられたときに金融システムが混乱する恐れがある。

さらに、過剰流動性急増は当然インフレの火に油を注ぐ結果にもなりかねない。
中国人民銀行としてもインフレ対策で金利を上げると海外からのホットマネー流入を加速しかねない。同様にインフレ対策で人民元切り上げペースを加速させる手もあるが、これはこれで外為投機筋が先高観を見込んで中国に熱銭を入れてくる可能性が強い。有効な打つ手もなく、このまま投機マネーが流入しそうな形勢ではある。

さて、金価格は940ドル台まで急騰。引き続き、ドル安、原油高、インフレ懸念、米金融不安が効いている。それに昨晩は上記の地政学的要因も加わった。非常に分りやすい相場ではある。

なお、今日はこれから日経CNBC12時からの昼エクスプレスに出演します。内容は日経朝刊BSCS番組欄の"BSはいらいと"に出ています。

2008年