豊島逸夫の手帖

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IMF金売却案を米財務省支持に回る

2008年2月26日

先日の東京G7でロイターがすっぱ抜いた、IMF金売却案。イタリア経済相の談話で"合意"ということであったが、マーケットは"狼少年"扱い。またか...、という反応であった。これまでの例では、結局IMFの決定には85%の合意が必要で、米議会(米財務省ではないことに注意!)の反対で否決されてきた。また、当時のIMF金売却案の目的は最貧国救済資金捻出。ところがその最貧国(アフリカなど)の多くが金生産国ということで猛反対に会ったのだ。

さて、今回の案は元BISのクロケット氏案。1290万オンス(401トン)を売却して投資ファンドを設立。IMF予算の補てんに充てるというもの。ちなみにIMFの金保有量は3217トン。米国8133トン、ドイツ3422トンに次いで第3位の公的保有量である。

今後予想される展開だが、なんといっても米議会の承認が取り付けられるか。鉱山業界の強力なロビー活動が過去にも阻止してきたのだが。方法も、アウトライトの売却ではなく、以前試みられた方法だが、相手国をひとつ選び、そこに売って、同時に買い戻すという操作で、価格には影響を及ぼさず、時価評価による評価益を捻出するというウルトラCもあるのだ。

だいたい、この材料は、相場が売りモードのときに投機筋に恣意的に使われる傾向もある。950ドルという強い上値抵抗線に跳ね返されたところで、とりあえず利益確定売りを入れておくには格好の機会。その後講釈には使えるスト―リーではある。

長期的にみれば、400トンという量は、相場を壊すほどのインパクトはない。単年で全量売却されれば確かに下げ要因にはなるが、上昇スピードを減速させるという効果に止まろう。ある意味、加熱気味の相場の頭を冷やすには良い機会じゃないの。900ドルともなれば、売りたい人は出てくるよ。財政赤字に悩む中央銀行(2007年には中銀売却が前年比32%増の485トンに急増しているしね)。鉱山会社だって900ドルなら新規ヘッジ売りを再開するかもしれない。投資家の売り戻しも加速しよう。工業用リサイクルも間違いなく増える。それらをこなしての1000ドル到達だから、一筋縄では行かない。あまり煽情的外電報道には惑わされないようにね。

2008年