豊島逸夫の手帖

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ファニー、フレディー & オイル

2008年8月21日

なにやらブロードウエーミュージカルの題名みたいなタイトルだが、これが足元NY株式市場のキーワード。ファニーメイとフレディーマックについては、週末のバロンズ誌の公的資本注入報道で問題が再燃。昨日はピムコのビルグロス氏が米国CNBCで、その報道を追認するかのような発言。両社の株価があっというまに25%もの急落。公的資本注入ともなれば、株価が薄まりゼロになるのも時間の問題と囁かれる。

ただ、ウオール街が最も心配していることはGES二機関の株価ではない。ゼロになっても、所詮、株主の問題とドライである。それより最大のポイントは両社が米国住宅金融市場の大黒柱として流動性の供給元(liquidity provider)であること。住宅ローン債権を買い取ったり、証券化して売却したりする機能の中核を担っているので、ここが臓器不全状態に陥ると不動産市場全体が危篤になるリスクがあるのだ。

米国住宅市場の現状をまとめるとこうなる。
―とにかく底が見えない。
―全米の一部の地域で住宅販売増も見られるが、差し押さえ件数は高水準で推移し、住宅価格はまだ下落基調から抜け出せない。
―フレディーやファニーの機能に不安が生じれば、住宅ローンの貸し倒れリスクも高くなり、ローン金利も連れて高くなってしまう。悪循環である。
ここをウオール街は心配しているのだ。

そしてオイル。ゴールドマンサックスが今年年末までに149ドルという予測。150ドルと言わず、149ドルに抑えたところが妙に信憑性があるような印象を与えるのか。なにやらスーパーの298(ニッキュッパッ)を連想させる値付けではあるが。加えて、フロリダ半島をハリケーンFayがウロチョロ。メキシコ湾へ迷走するルートも否定できず、天気図と睨めっこが続く。

かくして、ファニー、フレディー & オイルは、楽観と悲観の間をさ迷う。

さて、業界がらみの話題をひとつ。

欧米では大手食品、消費財会社が商品トレーダーをリクルートしているという話。穀物、原油価格の乱高下を乗り切るにはヘッジがますます重要になるので、自社で商品市場の専門家を雇用し、グローバルな素材調達部門のヘッドに据えようというのだ。すでにプロクター&ギャンブルは、かなりの商品価格へのexposure(露出)をヘッジ済み。ユニリバーはCPO(chief purchasing officer=チーフ購入部門オフィサー)というポジションを新設。ケロッグもすでに90%をヘッジ済み。ペプシコもヘッジを増やすという。

大手食品会社などから依頼を受けたヘッドハンターが活発に動いているとのことだ。市場の裾野は、このような処でも拡大しているのだね。

2008年