豊島逸夫の手帖

Page408 噂で買ってニュースで売るプロ

2008年1月16日

今日のNY株式市場の話題は、シティー10-12月期1兆円の最終損失。NYダウは今年に入って早くも5回目の200ドル超の下げ。日経も一般紙(毎日など)も一面トップに、シティーのサブプライム損失計上2兆5000億円。欧米全体で10兆円超す。予想されたこととはいえ、実際、このような数字を突き付けられるとマーケットはたまらない。シティーの株価も1日で7%もの急落。これで3か月で41%も下落したことになる。フロアーで最も頻繁に聞かれる形容詞は、ugly!(ヒドイ!)

そこで金市場のプロの反応は、待ってましたとばかりに利益確定売り。本稿執筆時点(朝6時)現在で889ドルまで急落中。金融不安から派生する質への逃避というキャッチフレーズで買ってきたプロ。相当な追加損失発表ありとの事前観測(噂)で買ってきた。それが昨晩はニュースで現実のものに。ここはbuy on rumor, sell on news(噂で買って、ニュースで売れ)。筆者がスイス銀行のトレーディングルームでスイス人の師匠から最初に教わった言葉でもある。こういう基本的マーケットの発想は、ネット経由取引に移行しても、変わらない。

外為市場では円高進行。106円。筆者の想定するレンジ下限を割り込んだ。(プロもアマもドル安、円高で一致すればするほど筆者には気になる。素直に全体に協調出来ないのは、マーケットでプロ同士のキツネとタヌキの化かし合い合戦ばかりやってきた筆者の"悲しい性"かな...。家庭内でも、"あなたは素直でない"と怒られっぱなしだし...。お茶の間では常にベアー=弱気なのだ。対するcounterparty(同居人)はガンガンの強気を30年間維持!This is the story of my life...)

ついつい脱線したが、話を戻して、今日の円建て国内金価格は海外金安、円高のダブルで急落必至。ここは素直に買いでしょう。プロは毎月のノルマがあるから、いただける儲けは直ぐに実現せねばならぬ。個人に毎月のノルマはない。
さて、金融不安関連の今後の"噂"をまとめてみよう。

―自動車購入ローン債権、クレジットカード債権、学生ローン債権などを証券化した商品がサブプライムの二の舞になるか。

―信用度の低い地方公共団体発行債券(muni)などを保証してきた債券保証会社の格下げ。

―フロリダ州などで勃発した地方公共団体のサブプライム関連損失問題。昨年12月10日付け"フロリダ教職員の給料遅配"に詳説した。

等々、more shoes to drop(まだまだ何か出てくるぜ)という不安は消えない。FOMCの利下げ幅が広がれば広がるほど、こういう"噂"も広まるのがFRB、ECBとしては頭の痛いところなのだ。"それほど思い切った利下げ、緊急資金投入せねばならないほど実態はuglyなの?まだ民間は全てを知らされていないの?教えてベンさん(バーナンキ)"とくる。

金市場も、このような新たな噂でプロは新規買いを再開するだろう。もちろん高値警戒圏でショート(空売り)に走るプロもいる。しかし、NY先物買い残は引き続き最高水準で推移。プロの投機的売買の回転が速いから、買い残が減っても、すぐに戻る。結果、根雪みたいに蓄積する。

プロ集団のLBMA(ロンドン金協会)は、28名の会員アナリストの2008金価格予想を発表した。半分以上が1000ドル超の予想。ただし、年平均となると、予想価格平均値が862.33ドル。これはあくまで28名の算術平均であり、予測値の分布は上に下に散っている。

昨晩は、寝ようとしたら、我が家のスカイプ(ネット経由の無料電話)が鳴った。相手はGFMSのポールウオーカー。珍しくロンドンのデスクから。別に特別な要件は無し(だったら寝かせてくれよ!)。

どうも金価格見通しに迷っている様子。あっちこっちにスカイプしまくっているのだろう。彼の得意とするアジア中東市場の現物需要はさすがに900ドルでは模様眺め。でもNYSE上場のGLD(金ETF)残高は堅調な伸びを続ける。要は、今までのようにドバイや香港の現物需給を見ているだけではトレンドが掴めないのだ。現物取引の分野でもNYの存在が顕著になってきた。

ポールと話した時点では未だ900ドルを維持していたが、そののち急落が始まった。この下げで、金ETFもアジア中東も現物長期保有型の買いは入るだろう。対して、NY先物は目先売買分かれそう。短期ノルマ達成のための利益確定売りや新規空売りが出れば出るほど、長期保有派には"おいしい"価格になる。

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