豊島逸夫の手帖

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エアポケット

2008年3月5日

昨晩のNY時間午前11時過ぎから40分ほどの間に20ドル急落し、さらに午後にも10ドル以上の続落。エアポケットに入ったような瞬間的な棒下げの図である。月曜に乱気流に備えシートベルトは低くきつめにと書いたが、まさか、ここまでの急降下とはね...。

その経過を見るに、まずバーナンキのサブプライム悲観発言でNY株が朝方200ドル近い急落。これを嫌気した原油(景気後退=需要減)が急落。それに連れて金もストンと落ちた。この間、ドル相場はほとんど変わらず。結果、金の一日の下げ幅は2.3%。原油の下げ幅も2.6%。ほぼ比例したカタチ。ちなみに昨日はエマージングもインド株、上海株とも2%の下落。

ここで思い出すのは、先週IMF金売却発言で金価格が950ドルから920ドル台まで急落したが、翌日、再び950ドルまで反騰して戻したこと。最近の金価格は、ワンツーパンチを浴びてダウンしても立ち直りが早い。要は、買いそびれた人たちが下で口開けて待っている。ここは、最近また増加してきた金ETFの購入者たちに拾われそう。

その他の話題。

―米債券市場で2年物国債の利回りが一時1.5%割れまで急落。FRBの政策金利のベンチマークと見られているだけに、利下げ幅拡大観測がシカゴで出始める。緊急利下げ50bp、プラス3月18日FOMCで更に50bp、都合100bpという説。さすがにFFレート1%台までは、"過剰流動性バブル"の種を蒔いたとの誹りも受けかねず、二の足を踏むだろうが。

―そのFRB利下げとドル安の関連についてのコメント。
"They=FRB have a bigger issue than the US$. They do no worry about it." FRBはドル安なんかより、もっと大きな問題を背負っているから、ドル信認問題の対策は二の次。結局ドル安は、米国民に痛みを伴わないから、大統領選挙でも問題化しにくい。かえって、ドル安で割安感を感じた外国人投資家がドル建て資産を買い漁るだろうとの論調もNYでは目立つ。ドル安=外国勢のドル資金引き揚げという日欧などの論調と温度差を感じる。

―昨日の日経夕刊一面"インフレ調整後の比較でNY原油28年ぶり高値"の記事。これを金に当てはめると(セミナーやTVでは繰り返し述べてきたことだが)、金の1980年875ドルという当時の最高値は2289ドルになる。
ちなみに下記のミネアポリス連銀のサイトをクリックすると、インフレ調整済価格を何でも自動的にはじいてくれる便利な計算ソフトがある。1980年、875ドル、2008年とインプットすると2289.44ドルが出るよ。
http://www.minneapolisfed.org/research/data/us/calc/


―最後に気になる記事。今日の日経朝刊一面トップ。"公的年金、5年ぶりマイナス運用"。株安で2007年10-12月期 損失1兆5千億円。今期はもっとヒドイだろうね。大切な年金の価値が株価次第で兆円単位で変動する事実。消えた年金ばかりが問題ではないのだ。

ますます、株、債券から独立した価値を持ついわゆる"代替投資"に注目が集まろう。天然資源も、当然、その範疇に入る。本欄2月29日付けで詳報したカルパースの動きが日本の年金に波及するのは時間の問題か。某年金勉強会でのこと。レクチャーの後で、ある理事さんが、ボソッと一言、"理屈はいい。カルパースが買ったら、うちも買います。"ヒジョーに分り易い本音であった。

2008年