2008年2月29日
ドルユーロは1.52。ドルインデックスは73.69。いずれもドル最安値。ドル安が止まらない。そのなかで金は972ドルまで急騰。
昨晩NYの話題は、バーナンキ議会証言"中小銀行破たんの可能性示唆"。そしてカルパース、"商品"セクターへの資産配分を4.5億ドル(2007)から2010年にかけて72億ドルへ16倍に増加を決定。
まず、バーナンキの問題発言。これは筆者もNYのCNBC生中継で見ていたから、原文を伝える。
"There will probably be some more bank failures. There are some small banks, heavily invested in real estate in locals where prices have fallen and therefore there will be some under pressure. So I suspect there will be some failures. Among the largest banks, the capital ratios remain good and I do not anticipate any serious problems of that sort."
要は不動産価格の下げがきつい地域の小銀行には、たぶん、いくつかの破たんがあるだろう。大銀行は資本比率見ても問題ない。
こんな直接的発言は議会証言でも初めて。マーケットを揺るがすには充分なインパクトであった。Bank failures(銀行破たん)のひとことで、まずシカゴの米国債市場が反応。"質への逃避"マネーの流入である。そして金も、その受け皿となった。
S&L危機のときには1600の金融機関が破たんしたが、今回は50から100程度の破たんがフロアーでは囁かれている。なお、バーナンキは2001年の株安と比べ、当時は企業投資が痛んだが、今回は消費者がモロに影響を蒙っているのでタチが悪い、というような発言もしている。これもマーケットにはショック。これだけ語って、次のFOMCで利下げしないほうがおかしいよね。いかに原油が102ドルであろうとも。
そしてカルパース。ブルームバーグの報道であるが、2月19日の取締役会で2010年までに"商品"セクターの資産配分を0.5%から3%へ引き上げることを決定と、クラーク マッキンリー氏(スポークスマン)が語った。
"We are excited about commodities which have performed exceptionally well for us."
商品分野への投資の成績は抜群で、非常に興奮しているという、お堅い公的年金にしては、かなり入れ込んだ発言。スタッフも増員するそうだ。
この決定の背景にはCIO(投資担当最高執行役員)ラッセル リード氏の方針がある。彼のお好みは中国、インド。
"Strength in commodities markets will be something we should see generally over the next 10 to 20 years."
商品市場の強さは今後10年から20年続くとの見立てである。とにかくヘッジファンドと全く異なり、年金の投資スパンは超長期的なのだ。分野としてはインフレにリンクしたアセットクラス、具体的商品はdepending upon market opportunities(マーケットの状況を見つつ決める)という方針。
なお、カルパースは、すでに株、債券から11%をインフレにリンクしたアセットクラスにシフトすることを表明。確定利息ものは26%から19%へ配分比率を落とすとも述べている。
昨日も再掲載した1月10日付け本欄"1000ドルへのシナリオ"。
金が1000ドルになるとき。サブプライム救済のためにFRBが金利を3%にまで下げる。ドルユーロは1.50突破。米大手住宅金融会社が破たんする。原油は120ドル。中国、中東の政府系ファンドが金へ分散投資。カルパースなどの米大手年金が金ETF購入開始。中国の金解禁進行。ホルムズ海峡では米とイランが接触。大型金鉱山会社合併によりヘッジ売りの大量買い戻し続く。南ア金鉱山は鉱山事故多発で深層鉱脈採掘を断念。(引用終わり)
今日は"破たん"と"カルパース"の現実味が増し、ますます当初の1000ドルシナリオが固まってきた感じだ。残るは政府系ファンドと原油120ドルか...。
まとめれば、利下げ観測、ドル安、原油高、インフレ懸念、サブプライム信用不安、株不振。これだけ構造要因が複合要因となって作用している結果としての金1000ドルということである。
さて、本日は4時からパレスホテルでWGC主催セミナー。ほんとにジンクスが今回も当たった。WGCセミナー開催時に史上最高値更新という巡りあわせが、これで4回続いた。市場が調整モードで一段落のときに、さて次のセミナーの準備でも、と動き出すから、バイオリズムの波長が合ってしまうのだね。
今日の主役はポールウオーカー氏。こんなときだからこそ、彼の需給ファンダメンタルズの話を元に冷静にマーケットを見直したいと思います。とくに"これからどうするか"という問題ですよね、皆さんが知りたいのは。