豊島逸夫の手帖

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リーマンの噂絶えず

2008年6月4日

リーマンの株価が、ここ数日急落している。この投資銀行の名前は、ベアスタ破たんの時にも本欄にて繰り返し指摘したことを覚えておられると思う。今回のキッカケは、S&Pがリーマン、メリル、モルスタを格下げしたことに始まる。昨晩は、リーマンがFRBに適格担保証券を持ち込み、緊急流動性の供給を受けたのと噂。この制度は、べアスタ破たん後にFRBが債券買い取り対象を投資銀行にまで拡大したという新たな市場救済策である。このようなFRBによる資本投入というのは、その新制度を利用したということが、すわ資金繰り悪化か、との噂を呼ぶ。(日本の金融不安時にも同様の反応が見られたね)。

これに対して、リーマンはきっぱり否定。英語でFRB discount windowと言われるのだが、FRBの窓口に行ったことはない、というコメント。その一言でNY市場の後場には同社株は急反騰。相変わらずのジェットコースター相場である。

今回の金融不安再燃では、投資銀行の収益構造が弱体化していることが再三指摘される。ディレバレッジと言われる現象で、レバレッジ外しの傾向が顕著なので、テコの原理で収益を増幅させる"得意技"=レバレッジが使えないのだ。これは大袈裟に言うと、これまでのウオール街のビジネスモデルの崩壊とも言える。現在の国際金融業の根幹に関わる事態なのだ。

昨晩のもうひとつの話題が、バーナンキのドル安懸念発言。ポールセン財務長官が"強いドルは米国の国益"とコメントするのは毎度のことでサプライズはないが、バーナンキがドル相場に言及することは異例。やはり利下げ打ち止めの再確認かとマーケットでは受け止められ、その発言の数分前から対ドルでユーロも円も急落した。金価格も連れて急落。さらに外為市場では、このコメントが、必要とあらば外為市場介入も辞さずとの意思表示かと深読みする筋もあり。

最後に、あのジョージソロス氏が米議会で吠えた。原油も商品もバブルだ。とくにインデックス=指数投資が元凶。市場動向を示す指数のようなペーパー投資に巨額の機関投資家マネーが流入している様は、ブラックマンデー前夜を彷彿させる、との発言。でも、原油は下がらないよとも付け加えている。良し悪しの判断とは別にマネー流入は止まらないよ、ということだ。なお、同氏が米議会に呼ばれたのは商品先物市場操作疑惑の追及に関連している。

2008年