2008年9月18日
今日は、あまりのことに、原稿も2部構成。第1部で金価格に何が起こったのか。第2部でここ数日説明してきた金融危機の昨晩の展開についてまとめておく(アップデート版)。ここは第1部。
昨日のNY金市場で80ドルを越す急騰。一日の上昇率も10%以上。過去最大級の上げである。その要因をまとめる。
なんといっても、金融危機の中で"質へ逃避"マネーが株式から流入。昨晩は金融危機がゴールドマンサックス、モルガンスタンレーの証券上位2社の株価急落に波及するに至り、その流れは加速(この2社の問題については昨日の本欄で詳説したが、さらに今日の第2部で説明を加えている)。
ドル高、原油安というこれまで金価格上昇にブレーキをかけてきた要因が昨晩は反転した。ドルは対ユーロで1.43までドル安。原油は6ドルの急反騰。
インドの8月金輸入量が史上最高を記録したとのGFMS社のコメント。UBSも、金地金受け渡し業務が20年ぶりの多忙、活況と述べ、指数ではあるが 8月に出荷量が急増していることをグラフで示している。ムンバイではキロバーに、なんと1オンス10ドルものプレミアムがつく状態(通常は50セント)。今年に入り高値警戒感から買い控えていた世界最大のインドがついに本格的買いを再開させた
ヴェネズエラが年間15トンずつ金購入を実行すると表明。フィリピン中央銀行の高官は、ロンドンの会議で、金保有をperfect hedge=パーフェクトヘッジとコメントし、同国の金購入を示唆。その中央銀行部門全体では、年間売却量が365トンの低水準に止まる見込み。ワシントン協定で決められた年間売却枠500トンを大きく下回る未達状態になった。
金利が付かない金はドル金利動向に極めて敏感であるが、昨日のFOMCで政策金利は据え置かれたものの、先行き利下げ再開論が高まる。FRBのスタンスはインフレ警戒モードから成長維持、危機回避モードへ転換の兆し。
内部的にはNY先物金買い残高が2月のピーク660トンから直近では257トンまで減少した。400トンも減ったので、ポジション整理も十分に進んだ状況で新規買いが入りやすい地合いであった。
かねがね"今のマーケットの潮流とかセンチメントは一夜にして変わる"と語ってきたが、まさにその例であろう。
サブプライム発の金融危機は世界的レベルに拡大し、グローバルの金融再編、これまでの金融ビジネスモデルの崩壊などで、修復には1-2年はかかる様相だ。金価格急騰も一時的現象とは言えない。
なお、大きな流れについては、先日紹介した先週の東洋経済"市場観測"で2ページにわたり自説を語っていますので、改めて読んでみてください。3週間ほどまえ830ドルの時のインタビューで、タイトルは、"目先750ドル、年越しは4桁も"という記事ですが、内容の鮮度は失われていません。