2008年4月2日
ドル円は2円近いドル高円安に振れ、原油はかろうじて100ドルの大台を守るも軟調気味、そしてNY株は金融不安緩和を歓迎してダウ400ドル近い急騰。これまで商品ロング(買い持ち)、債券ロング、株式ショート(売り持ち)のポジションが蓄積していたのが、一斉にunwind(巻き戻し)され始めた様相。VIX(シカゴのボラティリティー指数=市場の不安係数)はピークの37から23まで急落。ということは、不安感が緩和され落ち着きを取り戻しつつあることを示唆。
さて、市場別に見てみよう。
まずNY株は、金融株中心に空売りしていた投機家の買い戻し(short-cover rally)、加えて期替りで新規のリスクを取りやすくなったファンドの参入(new money)も散見される。とくにリーマンの40億ドル増資が好感された。リーマンのCFO(財務担当トップ)は、エリン カルマンというカッコイイ女性。ビジネスウイークや米国CNBCのインタビューに丁寧に対応している。"ベアスタ株2ドルというメールを見た時には、桁違いかと思ったわ"と率直である。わずか10日前に米国CNBCのインタビューで資本増強は必要ないと言い切っていたので、昨晩再出演したときに、まずそこを突っ込まれた。"あれからも当社に関して色々噂が流れた。当社株を空売りするポジションも急増。でも、当社を信頼してくれている投資家の皆さんが増資に応じてくれた。これが何よりの信頼の証。ちなみにベアスタがショート攻勢でつぶされたことに関しては、SECが問題視して調査に入っているわ。噂に基づく空売りで企業の行方が決まることは納得できない。"優しい物言いだが、主張するところは主張する彼女に◎!
次に外為は、ISM製造業指数がちょっぴり好転した(とはいえ50以下だが)こと、リーマンやUBSの増資を好感してドル高。最近のドルは"米国経済の不安要因=リセッション懸念、金融不安懸念"で売られる面が強いので、その反動が出た感じだ。でも、市場のムードは、今月中旬に並び控える大手銀行、証券会社決算の数字見ないと、(狼少年に騙し続けられてきたから)安心できない。FRBの相次ぐ画期的新政策は評価できるが、これは対症療法。サブプライム問題で蓄積した損失を、"住宅ローン契約者、その証券化商品を買った投資家、(そして公的資金投入となれば)taxpayer納税者"の当事者に、いかに振り分けるのか。大統領選挙も絡み、これは政治問題となる。とりあえずバーナンキ医師がカンフル剤を注射したが、これから米国民は手術の痛みに耐えねばならぬ。そしてカンフル剤の投入量が多すぎて、米国内の通貨供給量(M3=マネーファンドなども含む広義のマネーサプライ)は、この1年で15%増という37年ぶりの上昇幅を記録しているのだ。過剰流動性のばら撒きが数字でも検証できる。ドルはまだ安心できない。
そして、金。説明しようとすれば、ドル高、原油安、金融不安緩和が下げ要因ということになる。しかし、ドル高といってもユーロは依然1.50台、ドル円は100円そこそこ。原油も100ドル以上。つまり、外部環境の変化では説明できない内部要因が下げを増幅していることになる。それは、マージン売りとか、ディレバレッジ売りとか、換金売りとか言われるたぐいの投機ポジションの売り手仕舞いに尽きよう。冒頭に述べた商品ロング、債券ロング、株式ショートの、典型的ファンドポジションの巻き戻しである。結果的には先物売り、現物は(安値拾いの)買いの構図。
先週はNY先物買い残も50.6トン減少して546.6トンまで下がってきた。とはいえ引き続き高水準。現物は900ドル前後で買う人もあり、ボラが大きいので警戒して模様眺めの人もあり。集中的に現物買いが生じているという感覚はない。とはいえ、900ドル割れでは 現物買いにもインドを中心に間違いなく拍車がかかる。筆者の想定していた850-880ドルの下値ラインに接近した。足元は先物売りで下値模索だが、長期的には久しぶりに買いゾーンに入ってきた。しかも 円高傾向で世界的に日本は割安に金を買える国だからね。下げが急だったので 上で逃げ遅れた人たちも待っているから まずは戻りは売られる展開となろうが 長期的上昇トレンドにいささかの変化もない!改めて、3月7日付"嵐の中の飛行"を読みなおしてくださいな。