豊島逸夫の手帖

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マネーの流れに"短期的"変調

2008年4月25日

サブプラ金融不安が"一時的に"改善傾向。NY株式も昨日は金融株が買われるなど、楽観論が台頭している。そこで来週のFOMCに織り込まれている25bp(0.25%)の追加利下げを"当面の"最後に、昨年後半から矢継ぎ早に続いたFRB利下げ攻勢も"ひとまず"打ち止めの観測が強まり、外為市場でドルが敏感に反応。ドル高に振れている。

こうなると、これまで買われてきた米国債、商品などは売られる。2008年マーケットの第一ラウンドは 米国債、商品の判定勝ち。続く第二ラウンドは、序盤戦ながら、株式、ドルが優勢の展開。まぁ、年末まで第三、第四、ヒョッツとして延長第五ラウンドまでもつれ込みそうだから、先は長い。気分は、今年の正月からまだ4か月そこそこしか経っていないのに、一年分こなしたような感じだけどね。

とにかく、目先は、商品、債券から株、ドルへマネーフローが"短期的"に変化しつつある様相。金も880ドル台というレンジの下限まで下落した。株安、サブプライム信用不安の嵐を避け"雨宿り"していた"逃避マネー"が、自宅に戻りつつある状況。でも、金や原油の分野に"別宅"を構えて長期体制で臨んでいる住民たちも多い。"長期の"マネーフローに変調と言うのは、いかにも短絡的。

金の下げは、もうひと押しありそう。アジア中東の実需が買い出動してきたのは間違いないが、レバレッジをかけた先物売りのワンツーパンチに比して、その効果は毎度指摘するようにボディーブロー型で地味だ。ワンツー攻勢でロープ際まで追い込まれ、そこで執拗にボディー打って徐々に形勢挽回する展開となろう。

さて、以下は諸々雑感。

―原油が金に代わってドルの代替資産とか書かれているけど、金は代替"通貨"だよ。金は多通貨分散として外為のように売買される。外国為替貴金属部という組織になっているケースも多い。原油には通貨としての側面はない。外為法で"支払手段"として規定されているのは金で、原油は該当しない。中央銀行の対外準備資産に金は入るが原油は入らない。いま、金より原油のほうが値動きが良いのは、

*高値圏で腐食しない金はリサイクル環流してくる。
*金利を生まない金は、利下げ打ち止めの材料により強く反応する。
*原油のほうが即効性あるサプライショックに反応しやすい。
という理由だろう。循環物色で原油が買われるときもあり、金が買われるときもあり、タイムラグもある。

―日本は野村のインサイダー騒動だが、昨晩のNY株式市場では、立場を利用して、ある銘柄に関して空売りしたうえで、流言飛語をマーケット関係者に囁き株価を下げたというインサイダー事件が話題。これに対しては、マーケットは元来、噂で満ち満ち、噂で動くのが常。その噂が本当かどうか、信じるか疑うかは投資家次第、という見方も根強い。このケースでは、もし"流言飛語"と思われた情報が本当の情報だったとすれば、それを利用して空売りしたというインサイダーになりうる。逆に、これが嘘の情報であれば、虚偽の情報で市場を操作して不当な利益を上げたというインサイダーになりうる。ビミョーな問題だね。

―最後に中国の気になる話。上海の友人からこんなメールが。
(引用)チベット関係のニュースは報道規制されており、聖火隊への攻撃だけは過剰に報道されておりますので、その点を理解しておかないと中国人の愛国心を見誤ると思います。CNNなどチベット関係のニュースになった途端に画面が真っ黒になって音声も切れる、と言う有様ですから偏った情報しか流されていないのであります。何か、やですねえ・・・・。(引用終わり)

昨年北京に行ったとき、天気予報は連日快晴なのに、連日スモッグでお天道様が見えない。中国人の同僚曰く"Jeff=筆者の源氏名、北京なんて空気汚染でひとの住むところじゃないよ。仕事終わったら、さっさと引き揚げたほうがいいよ"。その同僚が、先日"Jeff、いよいよオリンピックだ!見に来るかい?""いや、行く気がしないね"と、つい本音で答えたら、彼の声のトーンが急に変わった。明らかに気分を害された様子。国をあげての大行事を軽くあしらわれることは"愛国心"が許さないのだね。中日関係(と外交的配慮の順列で語る癖がついているのだが)とは、実にビミョーなものよ...。ちなみに筆者の名刺の韓国用肩書は韓日地域代表となってます。

2008年