2008年12月25日
今回は金市場をミクロから見て、需給要因を吟味してみよう。
まず、供給サイド。
―第二次ワシントン協定が2009年9月30日で切れる。その更新があるか。あった場合には、年間売却枠は400トンか500トンか。(2008年は500トンの枠の消化が未達に終わり、300トン台であったが)。ただ、この中央銀行金売却の問題は、年々影が薄くなっていることは事実。これまで公的売却した国々は、結果として、かなりの安値で手放してしまったので新たに売却しずらい雰囲気なのだ。
―とはいえ、IMF金売却は、ほぼ確実に最終決定される。2年間で400トン。実行は早くて2009年10-12月期、場合によっては2010年にずれこむかも。しかし、マーケットへの"心理的影響"は、発表時点に顕在化しよう。一時的動揺はあろうが、年間200トン程度であれば金ETFの増加などで容易に吸収できる量なので、要因としてはやがて織り込まれ陳腐化する。問題は2年間400トンが第三次ワシントン協定(が締結された場合)の、年間売却枠に含まれるか否かということだ。
―金鉱山会社のヘッジ売りは減少する。すでにヘッジ売り残高もピークの3000トンから500トン前後にまで減った。これまでのように価格が下落すると現れた、含み損をかかえた金鉱山の先物売りの買い戻しが、相場の下値を支えるという展開は、見られなくなるであろう。むしろ、金価格が下落すると、"高価格水準での先売りに乗り遅れた"という焦りから、新たなヘッジ売りに走る金鉱山が出る可能性がある。世界的株安の中で、金鉱山の株式も伸び悩み、経営は決して楽ではないのだ。どこもリストラの嵐である。
―新産金については、第一位になった中国がさらに二位との差を広げそう。資源ナショナリズム強まる中で、稀少資源の金については、中国国内に豊富な埋蔵量があるので、金採掘を奨励する政府の動きが目立つ。他方、南アの金生産は落ち込むばかり。新大統領を選出し、国内政情は不安定化し、白人経営者の頭脳流出がネックになっている。増える国あり、減る国あり、全体でトントンというところ。
―番外編として、中東やアジアのSWF(政府系ファンド)の金買いというシナリオは、ドルにもユーロにも不安感漂うなか、カントリーリスクゼロの通貨として金が浮上している状況下では現実味がある。
つぎに需要サイド。
―やはり宝飾需要に注目。世界的景気後退という負の所得効果が、金宝飾品にも及んでいる。とくに米国は2009年も立ち直れないだろう。インドも元気がない。唯一、中国が引き続き前年比プラスの増加を見せている。新興国全般では、金価格が下がれば値頃感からバーゲンハンターたちの買いが集中する。この正の価格効果が相場の下値を支える。
―工業用需要は、2008年に続き、低迷は必至。ここはプラチナ同様、景気後退の逆風をまともに受ける。
―投資需要は、とにかく相場次第。とはいえ、年金は、コモディティーへの運用を増やす方針を決定すると、相場に関係なく粛々と実行するので、金ETF残高は通年で増加するだろう。とくに注目点は、米国最大の年金基金カルパースがコモディティーセクターの中で、これまでのエネルギー、インデックスから天然資源などへのアロケーションへシフトする兆しが見えることだ。(機関投資家の話は どうしても横文字が増えてゴメン)。
そしてサブプライムの教訓から、世界中の個人投資家が、現物の金を選択する傾向は2009年も変わらないだろう。喉元過ぎればという諺もあるが、今回の金融危機で体験させられた喉元の熱さは、そう簡単に忘れられるものではない。
次回パート4は、いよいよ総括です。
さて、新著の流通在庫に関して、読者の方々から色々情報をいただきました。
大手書店がネットでも販売しているルートには在庫があるとのことでした。
例えば、
紀伊国屋書店
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4532353386.html
ジュンク堂書店
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0253235338
などです。他にも、こういう例はあるのでしょうが。地方の方で、正月休みに読みたいという向きには便利かも。
10,000部の緊急増刷が上がってくるのは正月明け1月6日頃らしいです。昨日あたりから、ブログ読者たちの動きが噂になって口コミで広がり、一般の読書家たちが書店で買い求める動きが出てきたという現場からのレポートもありました。全体的に品薄なので大型書店でも在庫補充がままならず平積みの山がへこんだまま、とも言われました。こんなことなら、もっと初版刷っておけばよかった(なにやら相場の"タラレバ"みたいね 笑)。