2008年5月30日
10年もの米国債の利回りが4%台へ。債券から株への資金シフト顕著。さらに、同2年ものは2.7%へ上昇。2年もののレートはFFレート(政策金利)の動向を計るベンチマークとされている。そのFFレートは2%。これはマーケットが10月までにFFレートが上昇する(つまりFRBの利上げへの転換)確率を50%以上と織り込んできた証拠とは、米国CNBCやフィナンシャルタイムズの見立て。その背景はもちろんインフレ懸念。さらに、米国経済マクロ指標の最近の出方を見ると、"なんだ、米景気、それほど悪くないじゃん"という楽観論の台頭。
でも、ドル長期金利が上昇して一番困るのは変動金利住宅ローンの借り手。やっぱり、根っこの住宅問題を見るに、そう楽観はできないよ。今、多少良くなっても、いずれ失速するとの見方も根強い。(筆者もその通りと思う。それゆえの米経済ダブルディップ=W型論)。
ドル高が特に円安に顕著。105円台。これを米国CNBCのテクニカルアナリストは"欧米金融市場の不安感後退の証拠"と位置付ける。外為市場でしきりに言われるのは、FRBがECBに似てきた。つまりインフレ警戒バイアス(傾向)が強まったということ。
商品市場では原油急落。といっても127ドル。これで"安くなった"と感じる己の反応が怖い。
気になるのは、当局(CFTC)が、原油先物市場にmanipulation=市場操作の疑いありということで、その"透明性"について調査中との報道。これは、本欄5月23日付け"原油と金の市場データの実態"に詳述したことに関連する。原油データは透明性に欠けるから、投機筋が勝手な解釈しても、それに対して"NO"と誰も証明できない、つまり言った者勝ち。ここに、市場操作疑惑の大元があるのだよ。
最後に金も880ドル割れ、プラチナは2000ドル割れの急落。これまで述べてきたことの結果が、全てここに凝縮されている。
今後について筆者の見解。FRB利下げ打ち止め、利上げ転換予測がマーケットで台頭したことで、ドルが買われ、金が下がっている。ここまでは筆者の想定内。でも、これはドル金利動向予測に基づく、マーケットの先取り。実際にそうなるかは別問題。どうも、市場シナリオの先取り展開スピードが筆者の想定より早すぎる感じ。年央に入り、金利上昇傾向が顕著になったので、年後半に米景気が再び失速するというW字型の見方に立てば、年末にかけて結局は 利下げ再開せざるを得ないかも、という結論になる。