豊島逸夫の手帖

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ドルの価値、ドルの価格

2008年12月5日

今日は、ドルの価値は下がっているが、ドルの価格は上がっているという話。前回の"FRBのヘッジファンド化"でも書いたように、今、米国当局はドルを市場に大量に供給している。その結果、一枚の100ドル紙幣の"価値"は、間違いなく薄まっている。

しかし、外為市場では、ドルの"価格"は、相対的な物差しでユーロや円との比較で高いか安いかが決まる。現状では、米ドルの"価格"が、対ユーロでは高くなっているが、対円では安くなるというネジレ現象が起きている。欧米の金市場はドルの対ユーロ価格をドル高、ドル安のベンチマークとして見ているので、ドル高が金の"価格"を押し下げる要因になっている。

さらに、ドル、ユーロ、円のどれを取っても、経済の構造的欠陥を抱える国々が発行した紙幣なので、通貨そのものに対する信認は低下し、国の信用力を裏づけにした紙幣の"価値"は低くなっている。しかも、各国とも自らの国の製品の国際競争力を維持するために、自国通貨安を願っているのが実態だ。

そこで、UBSのコモディティーストラテジスト ジョンリード氏は、"私に言わせれば、全ての通貨を売りたい気持ち"と述べたのである。

ここに金という無国籍通貨が浮上する余地があると言えよう。発券国のカントリーリスクとか国の信用力とは無縁の通貨である。

魚の目で見れば、対ユーロでドルの価格が上がっているので、金が売られているが、鳥の目で見れば、ドルの価値は下がっている、とも言えよう。

2008年