豊島逸夫の手帖

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商品は換金売りラッシュ

2008年3月18日

さて、いよいよ今晩というか明日早朝にはFOMC。ついに予想利下げ幅125bp(1.25%)まで出てきた。投資家にとって、このような金利変動は大きな影響があるが、金融政策の効果ということになると、利下げだけでは今の信用収縮という症状を治せないのが辛いところ。いくら血液をサラサラにする薬を投与しても、冠動脈の一部がコレステロールの固まりで完全に詰まり、壊死"心筋梗塞"を起こしているのだ。

その壊死寸前の患部がベア―スターンズ。ここでの治療は血管交換手術。執刀医はバーナンキ医学部長。患部(ベア―スターンズ)を循環器システムから摘出して、健全な血管(JPモルガン)と交換する。その上で、血液サラサラの薬を投入(大幅利下げ)。けれども、この病の根源的要因は、アメリカ人が贅沢な食生活に走り、血液内コレステロール(サブプライム)が増大したことだ。彼らの生活習慣が変わらなければ、この病は再発する。さらに、壊死の兆候がある血管が他の部位にも散見されることも気になる。当面はICU集中治療室で、生命維持装置の各種管に繋がれた日々を送らねばなるまい。

そして、今日から米国大手証券の決算発表が始まる。いわゆるconfession week=告白の週。ベア―スターンズ以外の患者も、病状の進行をありのままに主治医に告げねばならぬ。それによっては、さらに追加手術も必要になろう。

さて、昨日朝、原稿送信直前に飛び込んだ、JPモルガン、ベアースターンズを救済合併報道。その買収価格が一株2ドル。その後、NY市場では4ドルの値がついたが、いずれにせよ紙屑同然。2007年には170ドルだったのに。昨日本欄でベア―スターンズ株価プットオプション5ドルに値がついた話を書いたが、マーケットの評価を先取りしていたことになるね。

そして、リーマン株も同様にプット20ドルまであったが、実際、蓋を開けてみると40ドルから20ドル台に急落した。これも先見性があったことになる。株価オプション市場というのは、ウオッチすべきだね。こうなるかもしれないし、ああなるかもしれないし、というアナリストのコメントより余程当てになる。

外為市場では、日米欧の協調介入ありやなしや。ECBがインフレ警戒感より世界金融危機を重視し、利下げの方向性を打ち出せば、一気に協調介入の可能性は高まろう。どう見ても、このままドル暴落が続けば、赤字国米国への債権者(アジア、中東、ロシアなど)が黙っていまい。国際経済均衡維持のためにG7が結束する事態は十分に考えられる。

商品市場は軒並み大幅安。プラチナも100ドル以上の急落。流動性の枯渇した市場で、追加担保要求に迫られたヘッジファンドが売れるものから(そして儲かっているものから)売り処分する、いわゆる換金売りラッシュに見舞われている。商品コモディティーの金融商品化は、短期的だが、株、債券との連動を強める傾向がある。株、ドル、商品のトリプル安現象である。

金価格も例外ではない。ただし、信用不安=質への逃避買いが入るので、他の商品に比し、下げ幅は限定的。昨日は1000-1030ドルのレンジで推移した。こうして改めて見ると4桁のレンジになったのだね。感慨深い。いずれ3桁レンジに戻る局面もあろうが、趨勢的には4桁レンジの時代に突入である。

2008年