豊島逸夫の手帖

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910ドル台まで続落

2008年7月24日

ここ1週間の本欄見出しが全てを物語る。
7月16日 「原油、プラチナ急落、金急騰」
7月17日 「株、ドル反騰、原油続落、金反落」
7月22日 「株、債券、ドル、原油激動の中で浮上する金」
7月23日 「ドル反騰、原油続落、金融危機後退、金急落」
その間、金は一時990ドル近くまでつけたが、昨晩は920ドルを割り込んだ。結局、行って来いで、振り出しに戻ったカタチ。

1週間で70ドル近くの短期価格変動は、今の時代にそれほど驚くことではないが、筆者が驚いているのは、金を取り巻くマーケット全体のセンチメントの振れである。悲観論と楽観論の間で、かくも激しく振り子が動くことも珍しい。とくに金融不安に対する危機感というセンチメントが猫の目のようにクルクル変わる。金融株もファニーメイとかバンクオブアメリカなどの売り込まれた株価があっという間に80-100%も反騰している。昨日も述べたようにショートカバーなのだが、それにしてもNY株式市場は今やカジノ化したかのような様相だ。背景要因として効いているのが当局による空売り規制。

問題は規制すると市場の流動性は薄れ、価格変動が激しくなることだ。個人投資家は恐れをなし、模様眺めに徹するようになってしまう。

金融危機の問題にしても、"規制"という応急延命措置で小康状態を保っているが、まだICU(集中処置室)から一般病棟に移ったわけではない。まして退院などは、まだ先の先である。マーケットは金融機関決算を"予想より悪くなかった"と判断するが、いかんせん損失の絶対額が大きすぎる。とりあえず、2008年第2ラウンドは打ち込まれたがゴングに救われた。ここで青コーナーに戻り、セコンドに傷の応急手当をしてもらい、水分を補給した上で、さぁ、これから2008年第3ラウンドが始まる。

金価格については、ラウンドを終了するごとに、落とし所の価格水準が徐々に切り上がっている。長期上昇トレンドにいささかの変化もない。ラウンドごとのポイントが10-9だとか10-7だとかばかりに目が行くと、試合全体の流れを見失いがちになるものだ。

正直、筆者も日々のマーケットの激動に、知らず知らず振り回されている。市場にどっぷり浸かってしまうことの弊害を感じざるを得ない。反省しきりである。自分では気がついていないうちに、アドレナリンが出てしまうのだよね。Once a dealer, always a dealer.=ディーラー一度やったら抜けられない、とはよく言ったものよ。

周りには迷惑掛けるが、長期夏季休暇を取って、しばらくマーケットから距離を置いてみようと思う。(要は、これを言いたかったわけなのだ。笑。)

2008年