豊島逸夫の手帖

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スーダンETF

2008年6月5日

ETFも、分散投資のツールとして多様化してくると、キワモノも増えてくる。その代表格が、スーダン関連に投資するETFというような話を以前書いたことがある。ただ、現在進行中の資源ブームの中では、スーダンという国は、湾岸諸国が食糧供給基地として注目する国であることが分かってきた。

地理的に言うと、スーダンという国はエジプトの南にあって、白ナイルと青ナイルが首都カルツーム近辺で合流する。豊富な水資源に恵まれた国である。油とカネは唸るほどあるが、水と食料はほとんど国外に頼らざるを得ない湾岸諸国から見れば、地理的にも近く、垂涎の的として映るらしい。サウジアラビアなどは、貴重な水資源を使用する国内小麦生産を2016年までに全面休止して、水資源保存を図るそうである。そこでスーダンに食糧基地的機能を求める。エジプトは、1920年代から隣国スーダンの水資源に注目し、現在も両国共同で大型灌漑プロジェクトを進めているという。

そして、最新の動きはアブダビ。スーダン国内で7万エーカーの農地を開発する大型プロジェクトに出資するとのこと。資金の出し手は、もちろん、政府系ファンド。その名は、ADFD(Abu Dhabi Fund for Development)=アブダビ開発ファンド。1971年に設立され、50カ国以上の貧困国対象のインフラ開発投資プロジェクトローンに特化する政府系ファンドである。

スーダンには推定一億エーカーの農地があるが、実際利用されているのは二千万エーカー程度。灌漑と言っても、ひたすら雨水に頼り生産性は低い。本当の意味で開発が進んでいるのは、わずか二百万エーカー程度という。ゆえに開発資金と技術は、喉から手が出るほど欲しいことは容易に想像がつく。

こうして調べてみると、スーダンに投資するということは、資源投資の範疇に入るのだろう。スーダンETFの背景は分かったけれど、同じ資源分野への投資なら、他にもっと主流のETFがあると思うね。

キワモノETFの例をもうひとつ挙げると、ワクチンETFというのがある。鳥インフルなどが勃発すると値が上がる目論みで組成されたようだ。ここまでくると、単に一発勝負で本来の分散投資という目的からは、かなり外れてくると言わざるを得ない。

今や、10年間アクティブ運用投信に投資した多くの人たちが、毎年高い信託報酬を払った挙句、株価指数並み(ならいいほうで、或いは、それ以下)の実績しか得られず、その反省からFPたちは一斉にパッシブのETFを薦めるようになった。取引所も競ってETF品揃え拡充を図る。メディアではETF特集の文字が毎日のように踊る。今後、色々なETFの売り込みがあるのだろうが、個人投資家としては、その内容の見極めもますます重要になろう。

サブプライムの反省から、日経紙面でも流行り言葉になった感がある flight to simplicity(単純な投資商品への逃避、というより回帰かな...)。ETFも元来シンプルが売りである。原資産が訳の分らない仕組み債券というような"分りにくい"ETFより、現物を買って愚直なまでに保管するだけのETFがトレンディーな投資の世界になったのだ。

さて、足元のマーケットは金曜日の雇用統計待ちだね。オバマ勝利も短期的な材料にはならない。ただし、彼は投資家には評判悪いね。昨日の米国CNBCの投資家対象ネット調査でも、マケインが7割以上で圧倒的人気。オバマ不人気の理由はキャピタルゲイン課税を現行の15%から倍近くに上げるという税改革案だ。ネットの書き込み見ても、"オバマ大統領になったら、年末までには儲かっているものは売る"などのコメントが目立つ。対してマケインには対テロの強硬姿勢などから"なんとなく頼りになりそうなおじさん、或いは、お爺さん?"という受け止め方が多いように見える。ヒラリーは引け際が悪いね。女性支持層もちょっとガッカリかな。

2008年