豊島逸夫の手帖

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FOMC 0.5%利下げ、ユーロ反騰、円反落

2008年10月30日

おおむね想定内でマーケット全体が動いている。FOMCは事前のマーケット予想どおり50bp(0.5%)利下げ。ついに政策金利が1%に。

外為市場ではユーロ高、ドル安に動く。ユーロドル1.29。円は97円台。原油は反騰。金は一時770ドルまで急騰したが、その後は750ドル台で安定。まぁ、先週の金曜日が売りの"クライマックス"だったね。

NY株は、またまた引け前10分間で劇的な動き。前日比250アップだったのが、あっという間にマイナス74へ急落。連日"最後の15分間"で、その日の相場が決まる感じ。要は流動性が薄いのだね。

さて、FOMCの前に中国は利下げ発表し、ECBの利下げも時間の問題であろう。世界的に超低金利時代に向かっている。これは金利を生まない金には追い風。しかし、マーケット内部では"流動性の罠=liquidity trap"にはまりこんでいるから、利下げしても市場に流動性は戻らない。売買意欲は引っ込んだままだ。だからNY株も利下げに素直には反応しない。

今日の米国GDP発表は、市場のテーマが"世界同時不況"なので、要注意の材料となりそう。

まだ北京にいるが、ちょっと心配なのは、北京の地価の実勢が足元で20%程度下がってきていることだ。街中の庶民感覚を聞くと、あきらかに不況に備え、貯蓄モードである。それでも驚くのは、金は売れていること。結局、庶民の貯蓄手段のひとつとして金地金や金宝飾品が売れているのだ。

昨日は北京の低中産階級の地域に連れて行かれた。そこに"中国黄金第一家"=中国で一番金が売れている店、というふれこみの貴金属店がある。日本のデパートの一階と二階全部が貴金属売り場になったほどの規模を誇る。閉店間際の時間帯であったが、まだまだ熱気でムンムンしている。最も興味深いのは顧客の身なりからして、明らかに"フツーの主婦、労働者"たち、あるいは北京近郊の村から金を買いにきた人たちが多いこと。中国で金はお金持ちのものではない、庶民のものなのだ。日本で昔、三種の神器といってテレビとかマイカーとかが買われたが、中国では金宝飾品が三種の神器の一つには入る感じだね。

女性の店長さんが案内してくれたが、(失礼ながら)決してファッショナブルないでたちではない。普通の主婦そのままの飾らない身なりである。自宅から そのままの格好で店に来た感じ。そして、応接間には国旗が飾られ、中国共産党のポスターが貼られている。

地金コーナーには、"投資黄金"と刻印された100グラムバーから、スイス パンプ社のキロバーまで各種の品揃え。苦笑してしまったのは、日本の"金地金千両箱"みたいな"黄金宝箱"までポスターつきで大々的に販売されていることだった。

でも一番賑わっているのは、一階のネックレスとか指輪コーナー。24Kと18Kと両方品揃えされている。18Kのデザインもイタリア風になってきた。かれらは"イタリアにinspireされたデザイン=イタリアのエッセンスに影響されたデザイン"という。決してコピーなどとは言わないよ。当たり前か...。

地金の売行きは、市場参入が増えて、業界内競争が厳しくなっているそうだ。コイン商から地金商、銀行、そして金取引所まで参入してきた。上海黄金交易所自身が小型金塊を個人が買えるシステムを作った。銀行の金通帳を取引所に持ってゆけば小型金塊を引き出せる。公表は出来ない各社の販売高まで見せてもらったが、8社ほどが入り乱れて競争しているのだ。

それから四大商業銀行が発行している金口座(こちらは現物を引き出すことは出来ないペーパーゴールド)が、2007年100トン、今年は130トンも売れているという。純金積立まで始めるというので、色々日本の経験を聞かれた。これからの中国金需要を牽引するのは投資需要だと現地のアナリスト氏も語っていた。

中国人投資家の心理は日本と異なり、とにかく相場が上がらないと盛り上がらないそうだ。もちろん安値を拾うバーゲンハンターも多いが、それでも売り上げは相場が上がっているときのほうが断然多いという。金価格が700ドル近くまで下がる過程で、日本はちょっとした金買いブームになったが、北京のお店は普通か、やや静かであったという。それほどに国民性というか民族のDNAが違うのだね。

話は飛ぶが、ベトナム向けが好調で、今年は年間100トンを記録するかもしれない、という話であった。アジアの現物買いは強い。

2008年