豊島逸夫の手帖

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第2部 金融危機の拡大

2008年9月18日

今日は2部構成で、この第2部は、この数日、本欄で説明してきた金融危機の昨晩の動き(アップデート版)である。

やはりゴールドマンとモルスタがやり玉に上った。株価が14%、24%の下落。モルスタ会長は空売り攻撃だと声高に非難。でも自分たちだって空売りで巨額の売買益を享受してきたのだよね。あんたには言われたくないという感じ。

さらに、モルスタは銀行のワコビアなどを合併相手に検討中との報道。外部資金調達に依存する投資銀行が、預金という安定的な資金基盤を持つ商業銀行と合併して、総合金融メガグループとしてライバルに対抗する必要については昨日詳説した。

いまや、モルスタ発行の債券が、米国債の利回りを12.25%も上回る。これは、distressed=破たんに近い状況を示唆する数字である。モルスタの1,000万ドルの債務に対して、債務不履行に対する保険を5年間かけると、その保険料が144,000ドルから825,000ドルに跳ね上がった。これは、格付けでは"B2"にあたり、ジャンク債の範疇に近い。現在の同社の正式な格付けは"A1"であるから、なんと10段階の実質的格下げということになる。これはリーマン破たん前夜の水準と同じなのだ。

ゴールドマンサックスも、債務不履行に対する保険料は80,000ドルから500,000ドルへ急上昇し、その格付けも正式には"Aa3"だが、実質的には9段階低い"Ba3"の扱いを受けている。

ワシントンミューチュアル=WAMU(銀行)は、ゴールドマンサックスの仲介で、身売りのために自社をオークションで売却すると発表。

さらに欧州にも波及。UBSの株価も急落(UBSの実態については、2008年4月22日"スイス メガバンクの凋落"で詳説した)。

英国では住宅金融大手のHBOSが株価急落でロイズが救済合併へ。

ロシアでは株式市場を2日間にわたり閉鎖。主要3銀行に440億ドル緊急融資の用意ありと発表。

それから、もうひとつ米国民にショックなことがあった。MMF(マネーマーケットファンド)の元本割れ、解約殺到という騒ぎである。MMFは本来、国債やエージェンシーもの(例のファニーなどのGSE発行債券)などを中心に運用し、"安全で流動性ありいつでも売買できる"ということがウリ。米国個人投資家にとっては安全資産の代名詞みたいな商品であった。そのMMFの元祖リザーブ社のプライマリーファンドが元本を3%割り込んでしまったのだ。その原因は、リーマン発行の債券(コマーシャルペーパー)を組み入れていたのだが、その価値がゼロになってしまったこと。そこで、同ファンドは契約上認められている緊急時の7日間解約凍結を発表した。今週火曜日午後3時以後は、即時解約には応じないということで、保有者が解約に殺到。さながら取り付け騒ぎみたいになった。その結果、先週金曜日には62億ドルあった運用資産が23億ドルまで急減。なお、このMMFの総市場規模は3.5兆ドルに達するが、大手フィデリティーとかドイツ銀行発行のMMFは元本割れなしと発表。あるいは元本が割れれば、自腹で埋めあわせ元本を維持することが普通だ。いずれにせよ、個人投資家がMMFで損失を出した最初のケースになってしまった。

AIGの公的救済は2年間の執行猶予だね。9兆円を2年間融通してあげるから、その間に手持ち資産を売却し、キレイなカラダになってやり直しなさい、という措置となった。気になるのは、その9兆円がどこから捻出されるかということ。財務省は緊急に国債を発行して必要資金に充てるという。これって、結局ドル札を刷って、公的救済のために、ばら撒くという発想かね。ドル高への転換とか言っていたけど、結局、ドルの減価は避けられないようだ。

2008年