豊島逸夫の手帖

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BRICsの今後

2008年9月1日

前回は商品市場の今後について書いたが、今回はBRICs後について。

新興国市場の株価の下げがきつい。しかし、長期的トレンドが変わったわけではない。先進国から新興国への富の移転は10年サイクルの現象である。一方10か月サイクルの富の短期的移動もある。人口増大、稀少化する資源を背景にした富の長期的移転と、過剰流動性が売買益を求め短期的投機を繰り返すマネーフローの2種類が同時進行しているのだ。

 

GDP成長率 
2007→2008

インフレ率
2008→2009

米国への輸出比率

対外準備資産
2008年9月

中国

11.9→9.2%

 4.8→6.8%

20%

1兆9000億ドル

ブラジル

 5.4→3.8%

 3.6→5.3%

14%

   2050億ドル

ロシア

 8.1→7.0%

  9.0→14.6%

5%

  5600億ドル

インド

 9.0→7.5%

 6.4→8.4%

15%

  3300億ドル


これらの統計予測数字は最終的に修正されることもあるが、以下の大きな流れは把握できると思う。

―リカプリングで米経済と連動の兆候を見せる新興国経済の成長率はたしかに鈍化してきているが、それでも先進国から見ればかなりの高度成長である。

―インフレ率は警戒すべき域に達している。ただ、新興各国中央銀行の金融政策運営は機動的に動いており、先手先手の引き締めが70年代のようなインフレ悪化を防ぐブレーキとして働いている。ただし、利上げが経済成長の足を引っ張る面には注意が必要である。

―米国への輸出は貿易全体の2割以下にとどまり、ディカプリング(非連動)の経済的構造は認められる。

―アジア、ロシア経済危機後、新興大国はネット債務国から債権国へ変身した。なにより外貨準備が潤沢になっている。今回のロシア関連経済不安に対してもバッファー(ショック緩衝装置)となり危機の拡大を防いでいる。

―数字として出ていない部分で重要なことは、供給サイドの制約(インフラ不備、電力不足など)が成長の足かせとなっている。マクロ経済的に見ると設備投資が不足気味。(設備投資過剰傾向の中国は例外。)

まぁ、これらの数字を冷静に検証すれば、短期的振れはあるものの長期的成長ストーリーは不変と言えると思う。IMFの統計では、新興国の世界経済成長への寄与率は、2000年の50%から2007年には80%に急増している。世界経済のGDPに於けるシェアーも2007年には18兆1000億ドルで30%に対し、2013年には28兆8500億ドルで35%に上昇するという見通しだ。

2008年