2008年9月9日
昨晩のNY株式市場は、救済される金融業界の株が上昇(GSE2社は80%の暴落)、NY株価反騰のリード役となった。そこで、依然苦況に喘ぐ自動車、航空機業界からは、"うちらも救済して"との声があがる。モラルハザードの典型である。
失業率は6.1%に達したが、2002年の不況では7.8%まで上昇しているから、今回も7%台までは行きそうな気配。こうなると病状が悪化する実体経済全体が、"政府救済依存症"になるのが怖い。当然、その救済資金はどこから出るの、という議論が米国内では飛び交う。
世界同時株安連鎖から生じるマグニチュード7クラスの激震は回避されたが、財政赤字加速、実体経済のさらなる弱体化が懸念され、地震警報解除にはほど遠い。
友人の米国人銀行マンは、それでもEU経済よりましさ、と胸を張るが、どうもねぇ...。米国系アナリストのドル高論は、愛国心というバイアスがかかっているので、いまいち素直に受け取れない。ロンドンのフィナンシャルタイムズ紙になると、ドル高は短命と社説で言い切るけどね。この議論は大西洋の両岸に目配りの必要がある。
でも、このドル高&原油安で中国は漁夫の利だね。オリンピック終了後、インフレと経済減速の挟間で、苦渋の選択でインフレには目をつぶり成長維持優先を打ち出した中国政府にとっては、格好の時間稼ぎにはなったのでは。
なお、ポールセン財務長官は、"公的救済というバズーカ砲は使わないよ"と明言しながら、やっぱりバズーカ砲を撃ったという評価でかなり信頼感を落とした。そして、GSE2社の中で、ファニーはフレディーと一緒にされたくない、うちの経営はフレディーより健全と、週末のポールセン長官の"引導渡し"に最後まで抵抗したそうだ。
次の焦点は、やっぱり、リーマン。悪い時には悪いことが重なるもので、人気の商品系ファンドマネージャー、ドワイト アンダーセン氏率いるヘッジファンドのオスプレイが行き詰まったと先週明るみに出たが、そこにリーマンが20%出資していた。その窓口になったのがリーマンの資産運用子会社。これもスター格のファンドマネージャー、ノイバーガー バーマン氏の冠をいただく。一時はオスプレイ ファンドも年率15%を稼ぎ出し、ノイバーガー社も運用資産を3倍に増やした。それが、オスプレイ ファンドが8月には27%減。年初からでは40%減の惨状となったのだ。これは出資者が解約を要求できる契約規定の水準にまで急落したことを意味する。昨晩のNYでは、リーマンが決算を控えノイバーガー売却やむなし、との報道も流れていた。
株、債券、外為、商品。どれも相場で上がることもあれば下がることもある。その相場に30倍のレバレッジをかけてベットして(賭けて)いたウオール街は、その四つのどれかが下がるたびに、どこかの破たんが連鎖を生む悪循環に陥っている。