豊島逸夫の手帖

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記録ずくめの24時間

2008年2月27日

史上最高値更新、xx年ぶりの記録等々が、次から次へ出てくる一日であった。まず、米経済データから。
―卸売物価上昇率は事前予想0.4%を遙かに上回り1.0%。この一年で7.5%。これは26年ぶり。中国並みである。コアも0.4%(事前予測0.2%)。当然、インフレ懸念は高まる。
―消費者信頼感指数。これは全米5000世帯を対象にした統計。1月87.3に対し2月は75.0。これはイラク侵攻2003年2月の64.8以来の水準。さらに、消費者期待指数(これは今後6か月の見通し)に至っては、1月69.3から2月57.9.これは1991年1月55.3以来で17年ぶりの低水準。
―S&Pの米国住宅価格(大都市17を調査)は8.9%の下落。これで2007年10-12月期は20年ぶりの下落幅。

以上の経済統計を受けて、ドルは対ユーロでこれまでの安値1.4966を下回る1.4982の最安値。ドルインデックスも74.706の最安値。

なお、米経済統計の悲惨な状況に比し、同日発表のドイツIFO指数は上向き。欧州経済に対する懸念を和らげ、ユーロ利下げ観測が後退した。米経済と同じ程度にユーロ経済の統計もマーケットに大きなインパクトを与える例でもある。ドル円は相変わらず蚊帳の外。またぞろ円キャリーの亡霊が語られている。セミナーではドルと円は弱さ比べでいい勝負だから、レンジはそれほど大きく動けないと話してきたが、今日の日経の見出しは"円とドル2弱の様相"。全く同感。

そして原油価格も101ドルで史上最高値更新。ここまで材料が揃えば、金は上がるしかないね。前日のIMF売却報道を忘れたかのように一挙に930ドルから950ドルまで急騰。IMF金売却報道に揺れた25日NY時間10時頃に急落していたが、26日はほぼ一直線の力強い上昇。切り返しが早い。

今日の日経朝刊にはIMF金売却報道で軟調の記事が出て、筆者も"IMF売却の可能性高まる"とコメントしているが、その後の回復のスピードには報道もついて行けないほど。ただし、ここから強い上値抵抗線の950ドルを本格的に抜けるか否かが今後の焦点。昨日も述べたように900ドルともなれば手持ち金の売却に誘われる人たちも多い。その上で、上放れれば1000ドルは時間の問題。

なお、NY株は、これだけ悪い経済統計やらコールFRB副議長の悲観的発言を、IBMの業績見通し引上げの報がかき消し、ダウは僅かながら上昇。モノライン格下げ回避については、明らかに政治的配慮が働いたね。日本の金融危機のときもtoo big to fail(事は大き過ぎて破たんさせられない)との政治判断が働いたことと同じ現象だ。

グローバルなマネーの流れを見るに、引き続き、株、債券を嫌ったマネーが商品に集中している感あり。ただし、この現象を単に逃避投機マネーの流入という言葉で片付けるのは危険である。限りある資源、膨張する世界人口などマクロの視点で大きな流れを見る必要があろう。投機マネーは、その長期トレンドを増幅させているのである。単なる買って売って(in and out)の繰り返しでは、これほどの高止りという現象はありえないよ。

なお、2月19日付け本欄"小麦、鉄鉱石、そして石炭までも"で書いた石炭のストーリーが日経朝刊で昨日本日2回にわたり、石炭100ドルの衝撃と題して特集されているので、読まれると、さらに理解が深まると思う。

2008年