豊島逸夫の手帖

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総合取引所構想

2008年7月1日

今日の日経紙面で筆者の興味を惹いたのは、商品面の"総合取引所構想"賛成41%という記事である。東京証券取引所に現物拠出型の金ETFが上場された、その翌朝のタイミングというのも示唆的である。

そもそもこの構想の火付け役が 今回の現物拠出型金ETF上場であった。"東証で現物の金が買える"というメッセージは、業界にとって重いが、個人投資家にとっては便利になる。海外市場の趨勢でもある。これに反対することは"抵抗勢力"の謗り(そしり)を受けかねない。そうでなくても商品先物業界の弱体化は進行するばかりだ。

そのような市場環境のなかで、同業者の商品先物業者の41%が総合取引所に賛成。反対はわずか19%。この大差は筆者にとっても意外であった。結局は現状このままではどうにもならないと言う意識の表れであろうか。

そもそも、この議論の火付け役が金ETFであった。ETFという有価証券と金という商品。その二つのフュージョンが俎上(そじょう)に登り、さて、監督官庁はどこか、との議論から生まれた構想が総合取引所構想だったのだ。日経は推進派に見える。筆者もそうあるべきだと思う。

海外ではスーパーマーケットのone-stop-shoppingに喩えて、one-stop-exchange(取引所)と言われる。株でも債券でも金でも同じ取引所で取引できれば、その便宜性は飛躍的に高まる。今回の現物拠出型金ETFは、意図せざる派生的結果として、東京市場ビッグバンⅡの口火を切ることになった。

さて、東証金ETFだが、まずは販売現場の第一線に浸透するのに時間がかかるね。店頭は混乱している。特に対面営業は書類説明などで、とにかく余計な時間がかかる。そういう意味では、まず来るのは自分で勉強して決断するタイプ(do-it-yourself)。業者のお薦めに頼るタイプの投資家にはなかなか浸透しないと思う。業界の取り分は0.4%と薄い商品ゆえ、投資家にはコスト効率の良い商品ということになる。お客様は神様。個人投資家がニーズを感じて証券会社に注文を出すという発展段階をたどろう。投資家主導の商品は、ある臨界点に達すると一挙に"化ける"ものだ。

2008年