豊島逸夫の手帖

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サブプライムだから誰がやっても損は出る!??

2008年7月7日

米国独立記念日で週末は動きなし。そこで今日は国内の話題。国の年金運用が昨年は6兆円以上の損失という報道。それに対する厚労大臣の発言にカチンときた。"サブプライムなんだから、誰がやってもダメ"というコメント。

まず、年金運用が株の相場頼みという現状。次に、サブプライムで世界の株が下がっているのだから、しょうがないでしょ、という考え。いま、欧米の年金運用の世界では"株下落に対し、年金運用資産いかに守るか"という発想が主流である。株、債券などの伝統的資産が目減りするようなときに、別な値動きをする投資媒体で運用すれば、株の損も補てんできる。これが"代替投資=オルタナティブ"という考え。それを年金運用監督官庁のお役人は全く把握していないようだ。欧米年金が金を買うという行動も"代替投資"の典型的な例だ。

さて、土曜日は福岡でセミナー。80名程度の小規模で2時間たっぷり喋るという筆者の好きなスタイル。(300-500名というような大規模なセミナーでは どうしても聴衆との一体感が薄い)。参加者の皆さんの反応がじかに伝わってきて、会場の雰囲気も和やかな2時間であった。主催者側も敢えてコマーシャルは入れず気を使ってくれたと思う。事務局長の長崎さんがFPだから参加者の気持ちが分かっておられる。おみやげにいただいた本場の明太子は"よかたい"。今、焚きたてのご飯にのせて朝食を食べながら書いています。

最初の80分は世界経済情勢の説明。10分間の休憩時間に質問票回収して、後半は質問に答える。時間をオーバーしたが、40枚近い質問票をとてもさばききれず残念。でも、読者の視点がよく分ったので、今執筆中の日経から出版する本の参考にさせてもらいます。

質問の中で最も代表的な意見と思われるものをひとつ紹介しておきましょう。
"金価格はもう既に高くなっていて、もし急落したときが怖いと思って持っていません。今年の春頃、安くなった時が一時あったので、その時買っておけばと思ったのですが、株の上昇の方がそのころ良かったので、株ばかりやっていました。しかし、今、株が安くなり、また金上昇のような。去年の秋頃も上昇していた頃、もうかなり高いのでいつ急落するか心配で手が出せませんでした。ガイアの夜明けで、落ちるときはものすごく急落すると言っていたから心配です。"40代女性。

はっきり申し上げて、貴女はリスクに対する耐性が弱いようだから、政府の"貯蓄から投資へ"のスローガンに惑わされず、株でも金でも投資には走らないほうが良いと思います。こつこつ貯蓄を続けるべきです。友達の投資成功自慢話には耳を貸さないことです。同時にライフスタイルのレベルを、今より2段階くらい落とすことで将来の経済不安に備えましょう。

敢えて言えば、株は攻め、金は守りが投資の大原則ですよ。短期的時流に流されず、それぞれの役割分担を考えて運用しましょう。金を買うのであれば、基本の姿勢は、buy and forget=買ったら忘れる!です。忘れられる金額は、その人の総資産により異なります。1000円かもしれないし1000万かもしれない。自分で忘れられる金額を考え、そこから第一歩を始めることです。若い方なら居酒屋で3000円くらいは直ぐ使うでしょう。それを一回減らして 純金積立でも始めればよい。すると、不思議なもので、それまで気にならなかったバーナンキ発言とか中東情勢が急に気になり始めるものですよ。そうなればしめたものです。日本人に最も欠けるとされる国際感覚が徐々に身についてきますから。それだけでも3000円の積立の価値は十分にあると思います。

なお、この40代女性の質問者は、実は、日本の投資家の典型なのですよ。読者の方の中でも、これを読んで我が事と感じる方が多いのではないですか。しつこいようですが、リスク耐性が弱いというキャラの人は投資しないほうがいいです!それより身の丈に合った自分流の人生を楽しみましょう。

追記
質問にガイアの夜明けが出てきましたが、来月、同番組で中国の金情勢を特集するので、来週、中国の金鉱山取材に付き合ってきます。

2008年