2008年12月8日
ヘッジファンドの顧客が今一番慌てていることは、ファンドによる一方的な解約受け付け制限の発表である。
2008年のヘッジファンド運用資産額は2007年の200兆円近くから37兆円も減少が見込まれる(ヘッジファンドリサーチによる)。そのうちの7兆円が解約によるという。この解約ラッシュにより、多くのヘッジファンドが 株でも金でも運用資産処分売りに走った。これが相場急落の主因となっていることは間違いない。
そこで、ヘッジファンドの一部に顧客による解約に一定の制限を課するところが出てきた。その方法は、"gate"と呼ばれ、解約を運用総額のxx%というように上限を課すること。また、"side pocket"と呼ばれる手法では、買い手がつかず値が立たないような非流動的運用資産の部分を切り離し、サイドポケットに入れておいて、残りの"売れる"運用資産については解約に応じるというもの。さらには"運用資産全額について解約停止"という極端な例もある。
そこで慌てたのが、とくに富裕層の個人顧客である。"そんな、殺生な、知らんかったわ"ということで、ヘッジファンドに不信感を募らせている。その結果、パフォーマンスの良いファンドまでとばっちりを受けている。ここなら解約制限も無く、現金化できるというので、顧客の2-3割が解約を申し出ているという。
そもそも、この解約制限条項というのは、顧客保護の立法趣旨であった。一人の大口顧客が解約すると、ファンド全体のパフォーマンスに悪影響が及び、解約の意志の無い顧客までが迷惑するからだ。しかし、この解約制限を設けると、ファンドの運用資産処分売りを先送りして長期化させるという結果にもなる。実際、2009年にまで、この問題は長引きそうである。
ちなみに、11月のヘッジファンド全体のパフォーマンスはマイナス1.4%。9月10月の損失に比べれば、5%以上改善されたものの、やはりマイナスである。そして、トップ10のファンドが平均45%の上昇に対し、ワースト10の平均がマイナス58%と、ファンドによるバラツキが顕著である。
勝ち組が、ショート バイアス(空売りファンド)+5.48%、systematic Diversified(分散運用ファンド)+2.85%。負け組が、エマージング(新興国)-3.53%、Equity Hedge(株式関連)-2.66%。
2009年は、ヘッジファンドにとって正念場。多くの富裕層がとくにファンド オブ ファンズに"売るに売れない"という流動性リスクがあることに気づいた。この不信感は容易には払拭されない。今後は、玉石混交のヘッジファンドの中で質的選別が顕著になろう。
そして、株、債券、金それぞれの分野で、売り圧迫要因として作用し続けると思われる。先述したように、先送りの様相なので、大手の破たんなども、これから現実の問題となりそうな気配だ。