豊島逸夫の手帖

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ガイトナー ラリー

2008年11月25日

最近は日本の3連休に何か起きる。この3連休も例外ではなかった。まず21日金曜日にはガイトナー財務長官指名の報でダウ500急騰。この背景は11月20日"金融危機第二ラウンド"に書いたとおりである。(同氏については11月6日付け"8時間のハネムーン"参照)。

ポールセンも次期財務長官への引き継ぎモードに入り、不安定な"空白期"に入ったとき、CMBSが暴落し、それを大量に保有するCitiが正にリーマン破たん前夜と同じ状態に陥った。そこに、人気のガイトナー氏指名のニュースで希望が芽生えた。

さらに、22-23日の週末にはCiti救済のためのギリギリの舞台裏折衝。一時は、Citi保有資産のあまりの惨状に当局もcold feet=怖気づいたと報じられたが、最終段階で妥協案成立。24日のNY株は 好感し300以上の急騰。

市場の不安感が緩み、VIX(不安係数)も先週の80以上から60台へ急落。"外為市場のVIX指数"=ドル円も円安に振れ96-97円へ。しかし、ドルはユーロに対しては急落。ドル安=商品買いの連想でコモディティー全般に急騰。原油も急騰。

金に関しては、21日金曜日にはCiti懸念で"経済有事の金"として買われ、一挙に800ドル台回復。24日には、Citi懸念は緩んだが、ドル安、原油高で820ドル台まで連騰。連休中に70ドルもの上げ幅である。これまで金価格の頭を抑えていたヘッジファンドの運用資産売却がこれで止まるのでは、という安心感(というか希望的観測)も強く働いている。

テクニカルには、先週までのプロの読みは圧倒的にショート(カラ売り)であったから、その逆をつかれ、ショート筋のストップロスが次から次へヒットされ価格上昇を増幅した。それだけ、皆、ショートにしていたのだね。

さて、これで本欄にて再三述べてきたサンタクロースの期限付きプレゼントも終了した。(まだ12月にもならないのにね)。800ドル以上では中東アジアの実需も出てこないよ。ここから更に急騰するようなことがあれば、筆者もふたたび"釘刺し役のジェフ"となる。

金価格に関して目先の最大の焦点は、対ユーロのドル安がどこまで続くかだね。昨晩のユーロ高、ドル安の動きがいまいち釈然としない。

全体的には、NY株の急騰も所詮ベアーマーケットラリー(弱気持相場の中の反騰局面)に過ぎない。昨晩のNY株も"魔の引け前"に前日比プラス500以上からプラス300台まで売り込まれて引けた。ドル高からドル安の明確な転換点もまだ見えない。商品にしても、インフレからデフレへ市場のムードが切り替わっている中で、oversold=売り込まれ過ぎた状態からの反発程度にしか見えない。それほどに世界景気同時後退の流れは重い。

昨日は、オバマ次期大統領が、この時期に異例の記者会見。ガイトナー財務長官指名と同時に、ラリーサマーズの国家経済会議議長指名も発表。記者会見の時の新閣僚の席次を注目して見ていたが、サマーズがどっしりとオバマの脇に並び、ガイトナーは画面に映らない位置。なるほど、経済政策の核は重鎮サマーズが決め、それを実務経験豊かなガイトナーが粛々と実行するわけね。サマーズが積極財政出動のシナリオを書くわけだ。

40兆円相当とも50兆円とも言われる大型財政出動。Citi以外にも広がることは必至の公的救済。唯一のリスクテイカ―となった公的部門のバランスシートは膨らむばかり。結果的に財政赤字は未曽有の規模へ拡大。これが昨晩のドル安の理由であれば、納得はできるのだが...。

2008年