豊島逸夫の手帖

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ラクダの復活

2008年5月9日

原油高騰の余波で、インドでは農業作業用にラクダが見直されているという。トラクターでは燃費がかかりすぎるからだ。原油価格上昇に比例してラクダの値段も急騰。寿命60-80年のラクダ一頭の価格が2年前に比し4-8倍の973ドルをつけているそうな。ちなみにトラクター1台が4000ドル程度とのこと。なお、ラクダの皮はハンドバッグに、骨はジュエリー素材に、そして、ミルクは"砂漠の白い金"と呼ばれ珍重されている。

もうひとつ、ドバイで拾った話。アフガンは大麻用のケシ不法栽培が盛んなことで知られ、国際的にも問題視されているのだが、穀物価格高騰の余波で、ケシ農家が、相次いで小麦などの穀物作付けに切り替えているという。穀物高騰が、麻薬問題対策には役立っているという皮肉な現象。

さて、金価格。880ドル台まで反騰してきた。昨晩のきっかけは、欧州中銀(ECB)が政策金利を据え置いたとの材料でユーロが買われドルが売られたこと。しかし、マーケットの実際の感触では、金ETF残高が、やっと再増加を始めたことが心理的に効いている。742トンまで落ち込んでいたのが752トンへ増えたのだ。案の定、ヘッジファンドの利益確定売りが一巡すれば、年金など長期保有の機関投資家や富裕層が下値を拾ってくる。金ETF残高減少に歯止めがかかるときが価格反騰のきっかけと書いてきたが、ぼちぼち、そのような市場環境が醸成されつつあるようだ。

インドの実需も、案の定、安値を活発に拾っている。金は縁起ものの国だから、価格乱高下で慎重になり、買い出動のタイムラグはあっても、いずれ買わねばならぬものなのだね。年間、最低でも600トンの需要が見込めるインドのマーケットは、文化的な金選好度の高さに支えられ、長期的に見れば需要の価格弾力性は低いのだ。昨年は、年前半に買いが集中し、後半は息切れした。今年は、年前半は模様眺めで、後半に集中するパターンのようだ。

さて、読者の皆さん、来る5月25日(日)に、新宿住友ホールでWGC単独主催ゴールドセミナーを久しぶりに開催することになりました。前回好評だった日経編集委員志田さんを今回もお招きして、原油、穀物価格の見通しを語っていただきます。それから私の金価格動向の話と、池崎キャスターを交えての お馴染み"本音トーク"の3部構成です。この3か月間で色々新たな話題も溜まりましたので、この機会に情報の一挙公開と行きたいと思います。志田さんも、喋るトピックが多すぎて、まとめるのが大変みたいです。

なお、一般告知は、来週14日の朝日新聞夕刊一面に出ます。ということは、日経読者以外の初心者の方々の参加も多いと予想されます。

2008年