2008年1月23日
FRB緊急利下げ直前には850ドルまで急落した金価格。それが直後から890ドルへ急騰。株、債券、外為、原油各市場と比較しても、その影響が最も派手にでたマーケットが金と言える。
1月17日付け本欄にこう書いた。
30日のFOMCで本当に75bp(0.75%)の利下げをやったら、金利を産まない金には大変な追い風になり、反騰のきっかけになるだろうね。
それが30日FOMCを待たず、緊急のテレビ会議1時間で(24時間ぶりという)0.75%幅の利下げを決定したわけだ。
金市場は直前まで調整入りの下値模索モード。ショート(空売り)も徐々に積み上がっていた矢先。まずは、そのストップロス、買戻し(ショートカバーラリー)が入った。噂は流れていたが、ほんとに緊急利下げをやったか、というサプライズである。
おやじギャグで申し訳ないが、相場には三つの坂あり。上り坂、下り坂、そして、まさか...。今朝は東京も雪で、サムーイ...。
結局24時間で金は40ドルという急騰となった。本稿執筆時点(23日朝6時)では892ドル。
為替の反応は、まずユーロ高、ドル安。1.44から1.46へ。ドル円は若干の円安、ドル高。金利低下基調のなか、円キャリ復活説なども流れる。
NY株は寄り付き後、ダウ464ドルまで急落。利下げ発表直後は、too late(遅すぎた)、そんなに経済の実態は悪いの?という懐疑感。それでも徐々にショートカバーが入り、結局ダウ128ドル安まで持ち直した。
債券市場では10年物米国債が遂に3.44%まで買われた。これは来週のFOMC本番で更に0.25%から0.5%の追加利下げ期待を意味する。
米国CNBCはNYの専門家に緊急アンケート調査を実施。以下はその結果。
―0.75%緊急利下げの評価
よくやった 74%
もっと下げるべきだった 10%
これほど下げるべきではなかった 8%
緊急利下げすべきではなかった 8%
―6ヵ月後のFF金利予測。
3.25%が、 3%
3.00%が、24%
2.75%が、30%
2.50%が、27%
(加重平均2.79%)
―米経済リセッションの可能性
1月2日時点で38.75%が、昨日時点では54.75%。
緊急利下げの切迫感が、実態の悪さを暗示、との見方であろう。
―S&P500年末予測
1月2日時点で6.6%上昇が、昨日では2.76%上昇に後退。
なお、FRBのコメントとしては、インフレ警戒警報公式解除、景気下振れリスク増大。
さて、金価格の今後。FF金利が2%台になるとして、問題はECBの対応がカギと見る。すでに欧州経済も下振れリスク発言で利下げ環境は整っている。このままではユーロ金利がドル金利を上回ることは必定。それを放置はしないであろう。BOJ(日銀)にでさえ、利下げ観測が出始めているくらいだ。そうなると日米欧三極同時利下げモードに突入。これは、金利を産まない金の相場上昇に対する重しがとれたこと意味する。そしてドル安。さらに金融不安。1月21日本欄に詳説したモノラインに公的救済あるやなしやがウオール街のもっぱらの話題だ。マーケットは神経質。不安指数VIX(ボラティリティー インデックス)も3.42上昇し30.55へ。昨年8月、11月に匹敵する不安心理の高まりを表す。その8月、11月の後に金価格は急騰した。
ただし、原油高騰一服、FRBのインフレ警報解除、インドの金実需減少、金ETFに利益確定売りなど下げ材料も出てきた。浅い調整局面が、いましばらく続くと見る。