豊島逸夫の手帖

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デフレ環境下のドル安

2008年12月19日

妻の風邪の看病で早朝から家事にいそしみ、ブログ更新も手短になる。外では仕事優先、内では家族優先、というのが本人の自己申告評価である。まぁ、友人たちは、筆者のことを内弁慶ならぬ外弁慶と評しているが(笑)。

さて、12月17日本欄に、こう書いた。

一言でいえば "デフレ下のドル安"ということかな。従って、今年春に"原油急騰、インフレ懸念ピークの中のドル安"という環境で金が1000ドルつけた時とは、状況が様変わりである。(引用終わり)

今日の日経朝刊3面の見出しが、まさにデフレ下のドル安を連想させる。"NY原油37ドル台、デフレのリスク一段と"という志田編集委員の記事。そして隣には、"ユーロ、対ドルで3か月ぶり高値"の見出し。ゆえに、金価格もドル安エンジンは全開だが、インフレエンジンは逆噴射している。

11月26日付け"米国財政赤字レバレッジによる膨張"に、こう書いた。(今日はカット&ペーストで手抜きの謗りは免れんな)。

ユーロ安ドル高の潮流に変化の兆しが見えてきた。筆者は、"魚の目"で見た市場の潮目に異変を感じたとき、まずはマーケットに聞く。ディーラー上がりの習性である。30年間のキャリアで培ってきた、"NY、シカゴ、ロンドン、チューリッヒのマーケットの友達の輪"をフルに活用する。昨晩も、いろいろ世界各地の友人とチャットしていたのだが、そこでシカゴのトレーダーの一言が、筆者の"魚の目"で見る相場観を変えた。

彼は、つい2週間前までは、"米国経済のほうが欧州経済より金融危機からの立ち直りが早いはず"という(若干、米国人としての愛国心でバイアスがかかった見方であるが)見解に基づき、ユーロ売り、ドル高の通貨先物ポジションを抱えてきた。それが、昨晩は"米国経済の痛みは酷くなるばかりだ。FRBがヘッジファンド化している。米国金融政策は、明らかに量的緩和、ゼロ金利という日本人のジェフには御馴染の方向に向かっている。"という見方で、ユーロ売り、ドル買いのポジションをひっくり返しているという。ディーラー用語でdouble upというのだが、ユーロ売り、ドル買いをチャラにするだけではなく、ユーロ買い、ドル売りのポジションを新たに作っているのだ。(引用終わり)

実は、昨晩、奥泊まりの御台所(みだいどころ)様の御寝所にて宿直(とのい)を相勤めていた折り、上記のシカゴトレーダー氏とチャットしたのだが、"メリー クリスマス!良い年末になった"とすこぶるご機嫌であったよ。もうポジション手仕舞って、休暇モードである。

その御台所様から、昨日の本欄見出しにつき、きつい御咎めがあった。"金を通して"のところ、"金を通じて"と間違えて書いたのである。自分の著書のタイトルを間違えるとは、いかに御用繁多とはいえ、なんとしたことか、とのお言葉であった。

とはいえ、ブログ読者軍団のおかげで(出版社の広告がなくても)、アマゾンの総合(全ジャンル)ベストセラーランキングで、130位から一気に20位台にまで急騰しましたぞ。いまや、ライバルはアイドル写真集であります。昨日から、日経出版社の括りのランキングでは第一位に(1時間ごとに更新されている)。出版社の担当者が発売日前なのに、増刷の心配をしてました。

14万字を、金融危機がピークに達した時期に、出張の機中、車中で書くのはしんどかったが、報われました。感謝!印税の寄付先は、どこにしようかな...。

今日の午後は、某証券会社にて機関投資家向けゴールドセミナー。こういうホームグラウンドではない、"アウエーの試合"が増えてきたのも、時代の流れか...。

2008年