豊島逸夫の手帖

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原油バブル再燃 100ドル突破

2008年2月20日

サブプライム発の景気減速=需要減観測の中で、軟調気味かと思われた原油価格が息を吹き返した。きっかけはサプライ ショック。テキサス精油所火災、ナイジェリア政情不安、ベネズエラ情勢(2月13日付け本欄参照)、そしてOPEC増産見送りなどが重なった。

要は、今の原油市場、需要減少要因と供給波乱要因のせめぎ合いだ。80ドル台まで下げたが、意外にしぶとく持ちこたえた。そこでファンド筋は、もう一度上値挑戦を仕掛けている。売るときは需要要因を挙げ、買うときは供給要因を強調し、巧みに使い分ける。どう見ても、原油100ドルはバブルっぽいが、皆がそのうち下がるさ、と思っているかぎり相場は下がらない。

金価格は、原油高、ドル安(対ユーロ1.47)に、"市況の法則"どおりの反応で927ドルまで急騰。月曜(米国休場日)のロンドン後場建値が903ドルだったから、24時間で24ドルの急上昇だ。原油、プラチナに対して割安感が出てきたことも見逃せない。

NY株は、原油高=インフレ懸念=利下げ観測後退の台頭が、朝方の上げを帳消し。終わってみればダウ10ドルの小幅安。同じ理屈で、米債券市場も売られ、利回りは上昇。

さて、昨晩のテレビ東京 ワールドビジネスサテライトの金特集。海底金鉱脈開発の映像は興味深かった。筆者もセミナーで"日本で最も有望な鉱脈は伊豆半島沖にある"と述べてきたが、金価格が1000ドルに近くなると、その開発努力にも一段と熱が入るようだ。

気になったのは、最後のスタジオでの会話。小谷キャスター"金価格はこのまま上がるのでしょうか"。コメンテーター氏"私は懐疑的です。原油、ドルとの関係で金は上がってきましたが、いまやそう簡単な話ではないのですよ。そこにサブプライムがからみ、景気後退が深刻になると原油もドルも金もすべて下がることになるでしょう"。

金のコモディティー(商品)としての需要はサブプライム発の景気減速で減少するが、マネーとしての需要は"信用不安から、質への逃避""利下げ=ドル安加速"などで増加し、サブプライムが買い要因になる。この"金の二面性"(下記の図を参照)が見えていないので、金=商品という固定観念から抜けきれない。著名なエコノミストでも、金に関しては勉強不足が目立つ。付け焼刃的なコメントで無難に切り抜けようとする傾向がある。"そう簡単な話ではないのですよ..."。

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2008年