豊島逸夫の手帖

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デフレ時代の金

2008年12月2日

感謝祭明けのマーケットは、NY株もユーロも金も急落。820ドルまで一挙に急騰した金が反落することは想定内だけれど、ドルが対ユーロで(ECB利下げなどをテコに)ふたたび買われたことは、"ユーロ安が、かなり根強いな"という印象。

さて、インフレからデフレへの転換がマーケットの大きなテーマになってきた。わずか半年で、かくも市場のインフレ心理が180度振れることも珍しい。デフレ傾向になると、金は初期段階では売られる。デフレが"懸念"として浮上すると、インフレヘッジとしての買いが後退するという見方が支配的になるわけだ。しかし、デフレが"懸念"から"現実"になると、デフレスパイラルから破たんの連鎖が生じ、信用リスクが高まる。金融危機が悪化して、金が買われるようになる。

さらに、最も重要なことは、振り子が長期的にインフレ方向に振れ始めた事実は変わらないことだ。世界の人口爆発は止めようもないし、有限の資源が無限になったわけでもない。鳥の目で見れば、世界的にモノが絶対的に足りなくなることは火を見るより明らかなことだ。金融危機対策として大量のドルが市場に供給されていることも、果たして、この巨額のドルが、中央銀行により首尾良く回収できるかという疑念を生じさせる。マネーの面でも、マネタリー インフレの芽が徐々に膨らんでいる。

以上が長期的な見方。短期的にはデフレ懸念が金価格の頭を打つ。

なお、NY株安=リスクマネー撤退=金先物は売り再開(先週の急騰局面ではNY金先物買い残が急増している。回転が早いね。)、同時にNY株安=リスクマネー撤退=円キャリー後退=円買いという欧米市場の反応も定型化した。円は相変わらず、投機マネーのfunding currency=投機に利用される通貨として見られている。

ということは 海外金安と円高の同時進行、または海外金高と円安の同時進行という展開になりやすい。円建て金価格はダブルで上げ、または下げという価格変動性(ボラ)の高い状況となる。

2008年