豊島逸夫の手帖

Page598 債券市場のハルマゲドン現象

2008年11月21日

マーケットが金融不安第二ラウンド=12月危機に向かって緊張感を強めている。VIX(不安係数)も81.48をつけ。過去最高の89.53に接近。"外為市場のVIX指数"と筆者が呼んでいるところのドル円も、93円台まで円高進行。

欧米の投信保有者はファンドマネージャーの動きに目を光らせ、彼らにポジション圧縮の兆しが見えると、即、投信を解約する。"投信の負の連鎖"である。

ポールセンが金融安定化資金70兆円の残りは"緊急時の備えに手をつけずとっておく"と発言すれば、"やっぱり、まだ不発弾のでかいのがあるんだ"という不安が市場に流れる。

NY株は、またも引け前1時間で急落。いまや"魔の時間帯"と呼ばれる引け前15分である。 シティー、JPモルガン、バンカメが、それぞれ昨日だけで26%、18%、13%下げた。

いまやテーマは"デフレ懸念"。Deflation=D-Wordという忌み言葉が囁かれる。それを映して、原油50ドル割れ、自動車プラチナ触媒需要に依存するプラチナは、いよいよ金価格に急接近。金は、デフレという逆風の中で、金融危機の再燃=信用リスクのヘッジという材料で10ドルの反騰。

そして、債券市場がふたたび風雲急を告げている。シカゴのトレーダーが"クレジット ハルマゲドン2と命名したほどだ。CP(コマーシャルペーパー)市場の機能は回復したが、商業用不動産担保債券の不履行リスクの高まりについては昨日述べたところである。信用リスクの高まりが"質への逃避"により米国債、金に流入するという教科書的パターンが顕著。

昨晩の米国債市場は、10年もの国債の利回りが3.057%まで急低下。実に50年ぶりの低水準である。2年ものは1%を割り込み0.999%。今回の米国債バブルには、Deflation=D-Wordも効いている。10年もの国債が3%ということは、投資家がアンクル サム(米国)に10年間 3%の低利で金を貸すということだよ。それだけデフレを見込んでいるということ。

ちなみに、金はデフレになるとインフレ懸念後退で短期的に売られた後、デフレスパイラルが悪化して破たん=信用リスクが高じるに至り、逆に買われることになる。

なお、JPモルガンでは、12月、1月に50bp(0.5%)ずつの利下げを見込み、来年1月末にはFFレート0%を予測とのこと。 米国がゼロ金利になると、金利を生まない金には追い風になろう。

逆に金が売られる材料が、ヘッジファンドの惨状。解約ラッシュに迫られて手持ち資産を売却する流れが11月15日のヘッジファンド決算D-Dayを過ぎても止まない。米国ヘッジファンドリサーチ社によれば、ヘッジファンド運用総資産は10月に9%も減少して1兆5600億ドルになった。5か月連続のマイナス運用成果。絶対リターンが売り物のヘッジファンドゆえ 失望した顧客の解約が加速し400億ドル(4兆円)に達したという。

さらに、マクロファンド(例えば、株ショートとか商品ショートとかマクロ経済やマーケットトレンドに乗って相場を張るファンドで、ヘッジファンド全体の四分の一を占める)は、この一年で4%プラスの成績を上げたのに、110億ドル(1兆円)の解約が出た。損失に失望した顧客のみならず、とにかく不安だから現金化して様子を見るという顧客が、パフォーマンスの良いヘッジファンドまで解約に走ったということだ。 この点は、金融危機にも関わらず売られた金と様相が似ているね。

とにかく、ヘッジファンド業界の2009年は、大規模な業界リストラに見舞われること必定である。 これは、"短期的"な金売り要因となる。ただし、優良株がとばっちりで売られることに似て、解約が一巡するまでの一過性である。

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