2008年3月19日
100bp(1%)利下げを92%の確率で織り込んでいたマーケットに75bp(0.75%)の決定。NY株はダウ400ドルを超す急反発。ドル円は100円を回復。債券と金には失望売り。
まずは、FOMC声明文の要点(今回は異例の長文)
―経済成長見通しを引き下げ
―インフレ見通しを引き上げ
―とくに2名の反対意見あり。Less aggressive action (75bpまで積極的に引き下げることに反対)
全体的なトーンは、インフレ ファイターとしてのFRBの姿勢を確認した印象。Commodity inflation(商品価格急騰によるインフレ懸念)とhousing deflation(サブプライム デフレ懸念)の綱引きは続く。声明文が長文になったのは、インフレに関する記述が多かったから。これは、さし迫るインフレ懸念を考慮すれば、これ以上の利下げには慎重にならざるを得ないよ、とのメッセージとも読める。"利下げ中毒症状"を呈してきたマーケットに対する牽制球であろう。それでも、マーケットは4月、6月FOMCで50bpずつの追加利下げを当てにしている。"利下げカンフル剤"を絶ち、自ら"禁酒道場"に入ろうなどという気持ちは更々ない。
マクロ経済の趨勢は、いったん好転するも、米経済の抱える問題の根治にはならず、従って、やはりダブルディップとの観測。
市場別に見ると、NY株はFOMC発表直後に急落するも、引けにかけ急騰。結局、ゴールドマンサックスとリーマンブラザースの決算を好感して終わった。両社とも、日経朝刊の見出しでは"12-2月 サブプライム余波で利益半減、財務体質なお不信"ということだが、EPS(一株当たり利益)はアナリストの予想を上回ったことが評価された。事前予測との差がマーケットでは重要視される。リーマン株価は前日比46%の急騰。
米債券市場は100bpならず、失望売りで、10年もの国債3.4%、2年もの1.6%と利回りは上昇。
外為市場では、ドル高要因と円安要因が結束して100円回復した感じ。ドル高要因としては、ドル利下げ幅が予想より低かったこと、米国発金融危機一服の気配が見えたこと。円安要因としては、ホッと一息ついたマーケットの中でリスク回避の動きが"やや"収まったこと。円キャリーのイメージが強く残る欧米市場には、これが円売り要因とされる。日本サイドから見ると"株価連動を強めるドル円相場"ということになる。
そして、金は、やはり100bpを完全に織り込んでいたので、利下げ幅に対する失望感強く、さらにドル高にも強く反応して970ドル台まで急落後、980ドル台で推移。
金関連の話題としては2月のインド金輸入がわずか10トンに急減(昨年2月には59トン)。3月は1000ドルとなると、さらに減る見込み。1-3月の4半期で20トン台の公算も出てきた。通常は平均でも150トンはあるのに。
対して金ETF残高は先週末1000ドル台でも10トン増えて826トン。
インドの実需減と金ETF増の綱引き状態である。