2008年9月19日
事態は逼迫している。24時間で米国銀行株が30-40%も下落する。根本対策を考える時間的余裕もない。まずは"タイム!"をかけて、疲弊消耗しきった選手たちを少し休ませ体力回復を待とう。疑わしきプレーヤーにはレッドカードを切ろう。
そこで、日本の整理回収機構のモデルになったRTCのような不良債権買取機関を再設立しよう。銀行(=患者)の抱える劣化した債権(=病巣)が貸し渋りの悪連鎖を生んでいるので、まずはその病巣を摘出し、患者に体力回復の時間を与えよう。摘出した病巣は、まず政府(=病院)が引受け管理して徐々に処分してゆこう、という案がポールセン病院長から示された。そうしてくれると有難いとNY株式市場は400ドルを越す反騰。
そうしている間にも、連日、出血は止まらず、患者の中には失血状態に陥るものもあり、日米欧の病院が共同で大量(1800億ドル)の輸血をすることに。
失血状態に苦しむ患者を更に痛めつけるような暴れ者(投機家の空売り)たちにはレッドカードで退場してもらう、ということで空売り規制を米英株式市場で相次ぎ導入。
ということで、とにかく、タイム!をとって、緊急事態をまずは凌ごうという発想で諸諸の治療が施されることになった(根治療法は相当痛みを伴うから、先送り)。
カルパース(米国最大の年金基金)も協力を申し出て、ゴールドマンサックスとモルガンスタンレーの株式の貸し出しは停止することに。これは株式を借りて売りまくる空売り投機家を抑える効果がある。
これらの一連の措置で、市場全体の緊張感もかなり緩んだ。VIX(ボラティリティー指数=市場の不安係数)も、昨晩は一時42まで急上昇したが、結局33まで急降下した。それでも平常時の20台よりは、かなり高い水準ではあるが(今回はベアスタの時を上回る。VIXが30を超えると金価格も高騰する)。
その金価格も乱高下。昨晩、一時は920ドルまで急騰したが、RTC構想が伝わり、850ドル台まで急落。とくにカウンターパーティーリスク管理(取引先の与信管理)が厳しくなっているので、インターバンク市場の売買が制約されて機能しない局面も見られる。信用収縮の余波が業者間金取引にも波及している。
信用収縮が信用リスクヘッジとしての金買いを誘っていると同時に、価格変動も荒くしているのだ。
とりあえずの小康状態だが、サブプライムという悪性伝染病の汚染地域から続々避難してきた人たちで、狭い金市場はごったがえしている。年末まで数週間で200ドル程度の乱高下が2回はあるよと覚悟はしていたものの、市場環境がこれほどの極限状況になるとは想像していなかったよ。このままゆくとまだ3回はあるかも。
年末にかけて要注意は、ヘッジファンドの大型破たんは間違いなく出るから、そのような時には売り込まれる。ただし、中長期的には、上記の輸血などで相当血液を使うから財政赤字悪化、そしてドルの信認低下の加速も避けられまい。
RTC構想にしても、AIG2年間期限付き緊急融資にしても、時間稼ぎの療法である。その間に不動産価格が回復してくれれば重畳。でも、まだ2年はかかりそう。