豊島逸夫の手帖

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プラチナ崩落

2008年8月5日

夏季休暇中だが相場激動につき、ひとこと。プラチナの下げがきつい。これまでの投機買いの巻き戻しが一挙に来た。流動性が金市場の1/20だから価格変動もハンパではない。実需買いは入っているのだが、歯止めが効かず。南ア電力問題という供給要因も無視。劇場のシンドローム現象=火事だと観客が一斉に狭い出口に殺到している状態。出るに出られず。

その背景は、もちろん、景気後退=自動車販売減少=触媒需要減のシナリオ。純然たるコモディティーゆえ、景気の波をまともに受ける。

金も弱い。900ドル割れ。こちらは金融商品としての上昇要因がこれまでとは逆に出ている。ドル高、原油安、金融不安後退。

でも、これは、あくまで"虫の目"で見ての話。"魚の目"で見れば、ドル凋落の流れの終焉とも思えず。原油もこのまま下げ続けるとも思えず。金融不安の根はまだまだ深く、これで落着とも思えず。

さらに"鳥の目"で見れば、中国、インド経済の長期成長路線に変化なし。新産金が急増することもない。政府系ファンドや年金の運用多様化はまだ始まったばかり。

夏季休暇でマーケットから距離を置いていると、"魚の目"や"鳥の目"で長期的流れがより鮮明に見えてくるものだ。商品市場への資金流入もこれでおしまい、みたいな短絡的論調も増えた。投機資金は流出。長期資金は止まる。というのが実態であろう。

最後に、セミナー参加者にはお馴染みの下記のグラフ2点を再掲載しておく。昔の商品循環サイクル=ゼロサムゲームの時代(静的商品サイクル)と、今の市場の需給構造がダイナミックに変化している時代(動的商品サイクル)の違いである。

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2008年