豊島逸夫の手帖

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オバマノミックス

2008年2月15日

2007年10-12月期の世界金需給統計が発表された。

オバマ優勢で、にわかに彼の経済政策が注目されてきた。13日のウイスコンシン州での演説では、彼もかなり踏み込んだ内容に言及。22兆円(2100億ドル)の経済対策が目玉である。環境事業に今後10年間で1500億ドルを投じ、500万人の雇用創出。空港などの公共事業に600億ドル拠出し、200万人の雇用創出とのこと。

問題は、そのカネはどこから出るの?曰く、企業の課税抜け穴を絶つ、カーボン排出に対する課税強化、ブッシュ減税(所得層トップ2%の金持ち優遇減税)廃止、(所得層の90%に対しては1000ドルの減税)、そしてイラク撤退から生じる"平和の配当"など。ウオール街が気にするのは、配当、キャピタルゲイン課税強化案(15%から25%へ)。

なお、マーケットが注目するドルの価値についての問題には一切発言なし。米国民は国際感覚に欠けるから、自国通貨の価値変動には鈍感なのだ。欧州からの観光客がNYにどっと押しかける現象で、やっとユーロ高の影響は感じてはいるけどね。

そのドル相場だが、ここにきて潮流にやや変化が見られる。ドル売買の判断基準が金利差から、FRB、ECB、BOJなど金融当局が景気浮揚のためにどの程度利下げするか、という物差しに移っているのだ。FRBは大胆に利下げしたから景気対策に本気、ゆえに米ドルは買い。ECBはいずれ利下げに踏み切ろうが、タイミングが遅れているのでユーロは売り。BOJは、そもそも絶対的低金利ゆえ、利下げ余地少ないので、円も売り。ざっと、このような価値基準が台頭しているのだ。

NY株は、相変わらずモノラインに揺れる。ここにきてトリプルAをばら撒いた格付け機関に対する批判も一挙に噴出。そもそも格付けする会社から手数料を得るという収益構造が根源的問題。"ムーディーズがS&Pを格下げ。S&Pはフィッチを要警戒リストに"などと揶揄(やゆ)されている。バフェット救済案も、"救急車が来たが、けが人=CDOは放置して、健康な人たち=muniだけを乗せて帰ってゆく"などと、これも皮肉られている。

最後に、商品セクターではプラチナが2000ドル突破の局面も。南アの電力不足長期化見通しに、さらなる投機買いが入った。日中に30ドル下がって120ドル上がるとか、とにかく荒っぽい値動き。仕手戦の様相が濃い。誰が見ても異常な相場つきなのだが、誰も売ろうとしない(怖くてできない)という地合いだ。

2008年