豊島逸夫の手帖

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ドル反騰、株高、金融不安一時後退、金安

2008年4月21日

先週金曜のNYでは、寄り付きで大きく売られ一時910ドルを割り込んだ後、920ドル前後で推移中。950ドルの上値抵抗線で大きく跳ね返された。要因はドルが対ユーロで1.57、対円でも104円台まで反騰したこと。(その後 1.58、103円台まで反落しているが)。ドル高に強く反応することが、"目先"の地合いが弱くなっていることを示唆。(それにしても アナリスト予測が円高90-95円台に収斂、突進したところで、マーケットはするりとかわし、"はたきこみ"だね)。

先週、大手金融機関の決算発表を乗り切り、"告白の週"をこなしたことで株式市場には当面の安心感が広がったことも、"質への逃避"マネーの変調へ繋がっている。その意味では米国債も売られている。

マーケットのリスク回避の動きが止み、投資家のリスク許容度が増えていることの証として、NY市場では円安が語られる。"今や、マーケットは日本経済に多くを期待せず、円独自の要因がどうなろうとカンケーない。欧米外為市場で円はひたすら円キャリーのfunding currency=低金利通貨の円を売ってリスク資産で運用する道具として使われる面のみに反応する"。故に、円安が、とくにサブプラ金融不安後退を示唆する現象として見られるのだ。

さて、その金融不安が最悪期を脱したか否かについては、欧米でも賛否両論分かれるところ。マーケットの短期的反応は、とにかく期間業績が事前予想を上回れば可、という相対評価に尽きる。でも、巨額の損失決算額の絶対値とか、根源の米不動産価格の惨状を見るに、これで本当に"安心"とはとても言えない。そもそも老舗の銀行証券会社が、市場の花形商品とされてきた証券化商品で兆円単位の損失を連発すること自体、"どこをどうすれば、そんなに損が出るの"という単純な疑問=投資家の不安心理が残る。

ゆえに、筆者は従来からの持論どおりダブルディップ(二番底)あり、と見る。金融不安が仮に回復すれば、FRBが待ってましたとばかりに政策優先順位をサブプライム救済からインフレ予防へ変更する可能性をこれまでも繰り返し語ってきた。原油、穀物の高止まり傾向の中で、このシナリオが現実味を帯びてきたと思う。利下げから利上げへの転換、あるいは利下げ見送り、あるいは利下げ幅が事前予想を下回る(50bp→25bp)などの材料にマーケットは敏感に反応すると思う。金利を生まない金が"利上げ"に敏感なことが、足元の金価格軟調の原因のひとつであることは間違いない。

さて、金市場が900-950ドルのレンジを抜けるキッカケは、結局、需給ファンダメンタルズにあると思う。5月はインドの婚礼シーズンでもあり、900ドル台での需要動向が試される。今後のトレンドのキーワードは"需給相場に戻る"ということだろう。今日の日経夕刊のコラム"明日の勘どころ"でも読んでみてください。

2008年