2008年9月2日
昨日はBRICsについて書いたが、今日はPIGsについて。
Portugal (ポルトガル)、Italy(イタリア)、Greece (ギリシア)、Spain(スペイン)のイニシアルである。この4カ国は、今やユーロ安の象徴みたいな存在になった。ユーロ発足当時には、欧州の花形経済の一角を占めていたPIGs。でも世界的低金利、過剰流動性、希薄化したリスク意識の市場環境下で、ちとやり過ぎた。現在では、赤字国へ転落。経常収支がGDPに占める割合は、ポルトガルとスペインは10%、ギリシア14%、イタリア3%。ところが、ユーロ圏全体で見れば経常収支はトントンなのだ。PIGsが足を引っ張っている。
一般論で言えば、一国の経常収支が赤字になれば、自国通貨が下落して輸出が増えるという外為の自動調整メカニズムが働くのだが、PIGsはユーロという統一通貨の下にある。為替による調整が勝手に出来なければ、後は、景気が減速するに任せ、結果的に輸入が減少することによる経常収支均衡化を目指すしかない。ユーロ安の縮図みたいなシナリオである。
今や、ディカップリング論が後退し、米国経済の景気減速に、欧州経済も連動することが明白になったが、直近のマクロ経済データを見るに4-6月期の米国GDPが3.3%の増加に対し、ドイツ経済は縮小傾向が顕著。米国経済と欧州経済が連動しない、という意味ではディカップリング復活とさえ言われる。ただし、逆ディカップルだけどね。
このような潮流の変化で欧州通貨が売られ、ユーロ円も久しぶりに160円割れ。ただし、筆者が常々述べてきたように、ドル、ユーロ、円の三つ巴の弱さ比べの構図に変わりはない。ドル高とはいえ、米国経済は相変わらず、サブプライム発の金融不安というアキレス腱を引き擦っている。早晩、ドル高のメッキは剥げるだろう。
米国GDP3.3%と言っても、輸出頼みの構造で、ドル高が続けば失速することは明らか。どさくさに紛れて、中国政府筋などは、もはや人民元切り上げの必要なしと言い始めた。主要国が自国通貨安を願い、為替レートのアドバンテージを取って自国の輸出を増やそうという傾向は、近隣窮乏化政策と言われる。隣国を踏み台に自国だけは生き残ろうという魂胆がミエミエである。
いったい通貨の価値って何なのだろう、という根源的疑問も生じている。国際通貨制度に関わる根が深い問題であろう。
さて、今日からレイバーデイ明けの秋相場本格突入。この1週間は、すったもんだの挙句、案の定、振り出しに戻った。フライングでスタートやり直し。
なお、今日のテレビ東京系"ガイアの夜明け"で、金特集をやります。中国の金鉱山にテレビカメラが初めて入ったのだけど、筆者も興味あるので取材に同行して視察してきました。意外にレベルが高くて、正直、驚いた。結構面白い映像があるはず。(髪ボサボサの鉱山作業衣姿でヨレヨレの筆者の姿が映っていないことを祈るのみ...笑)。
初心者向けとしては、昨日の日経夕刊"ニッキーさん"で志田編集委員が金価格の仕組みを分りやすく説明しています。