豊島逸夫の手帖

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初心者向け"サブプライムをお宝鑑定団に出したら?"

2008年2月22日

筆者はテレビ番組"お宝鑑定団"のファンである。老舗の骨董店で大金はたいて購入した掛け軸。しかも、その価値はトリプルAというお墨付き、買い取り保証もある。ところが、最近、その店で買ったという骨董品が、じつはガラクタだったという噂が聞こえてきた。さぁ、その所有者の心中は穏やかならず。そこで、鑑定団に出して、本当の価値を知りたいところだが、その現実を知るのも怖い気がする。でも思い切って応募、結果は残念!ガラクタだった。そうなると、自分が保有する他の壷などの価値も怪しくなってきた。そこで、ひとつひとつ専門家(会計監査法人)に精査してもらうことに。

これが、今のサブプライム関連の証券化商品を抱えた金融機関の実態である。しかも"トリプルA"のお墨付きを出した格付け機関と、"買い取り保証"をした債券保証業者、そして販売した老舗の投資銀行にも火の粉が及んできた。お墨付きを出した会社は、じつは骨董店の経営コンサルタントであった。買い取り保証をした会社も、財務状態が不透明で、どうみても巨額の買い取りなど出来る様子ではない。見かねた当局は、価値の確かなお宝と、怪しいお宝に分けて、前者をまず救済しようと言い出した。後者は見捨てる姿勢だ。

この話が世間にも広まり、うちのお宝は大丈夫かしら、と続々、鑑定希望者が殺到する事態にまで発展。それでも、"怪しい"骨董品の所有者(銀行)は、鑑定結果が出るまでは、"いや、これは本物です"と主張する。購入価格は1000万円なのだが、さすがに遠慮して、簿価は800万円程度に下げて発表したものの、周囲の目はまだ懐疑的だ。

さらに大きな問題は、1000万円の購入資金が自己資金だったのか、借入金だったのか、ということ。借入金ならば返済せねばならぬ。すでに貸し手からは返済要求の嵐である。ところが、その壷は売るに売れず。結局、中東の大金持ちから高利で資本注入してもらい、その場を凌ぐことになった。

一方、危機的状況と判断した当局は、借入金の金利を下げるという救済策も実施。ところが、折悪しく、油の値段が100ドル突破という事態も勃発した。金利を下げ続ければ、物価上昇の火にまさに"油"を注ぐ結果になるは必定。さぁ、困った。当局の次の一手は?皆が固唾を飲んで様子を見守るというのが、今のマーケットの実態である。

そんな状況の中で、この価値なら間違いはあるまい、と買われているのが金ということか。まぁ、悪徳業者に偽物を掴まされるというリスクは残るけどね。でも、サブプライム関連のゴミみたいな商品より、はるかに価値は確かである。

というわけで、昨晩も、NYでまたまた金価格、史上最高値更新。一時950ドル突破の局面も見られた。

一度、ガラクタを掴まされた人は、一生忘れない。ガラクタにはならないような資産を選択するようになるものだ。いま、金を買っている人の多くは、そうした苦い経験を持つ人たち。世の中、そんなにうまい儲け話などあるはずがないと思い知らされ、せめて原油高から発する資産の目減りを最小限に食い止めようとの思いで金を買っているのだ。金は"いーシゴトしてますねぇ"と。

株は攻め、金は守り。金で攻めようとすると、思わぬ怪我をしますよ。金投機はヘッジファンドにやらせておきましょう。

2008年