豊島逸夫の手帖

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風雲急を告げる2008年第三ラウンド

2008年7月3日

米国財務長官ポールセン氏は、元ゴールドマンサックスのトップ。投資銀行のことは知り尽くしている。その彼が、ロンドンの記者会見で、ちょっと背筋が寒くなるようなことをサラッと言ってのけた。

"巨大化、複雑化した金融機関の秩序あるfailure(破たん)をスムーズにするための新たな手段を模索する必要がある。"
"べアスタ破たんは、投資銀行解体のための制度的改革の必要性を認識するきっかけになった。"
"too big to fail=巨大化しすぎて潰すにも潰せない、ということはない。"
(なお、グリーンスパン流に言えば、too big to liquidate quickly=素早く解体するには巨大化しすぎた、ということになる)。

本欄では繰り返し述べてきたことだが、リーマンのケースも、これまでのウオール街のビジネスモデルが最早行き詰まったことを示唆している。例えば、投資銀行の運用レバレッジは平均32倍という。さらに、デリバティブ商品の組成販売から生じるリスクのヘッジを投資銀行がお互いに掛け合っている構造。それだけ相互依存の構造になっており、いわゆるシステミックリスクは厳に存在する。彼らは、これまでクリエイティブ イノヴェーションをキーワードに証券化新商品開発競争に凌ぎを削ってきた。(今日は横文字多すぎてゴメン)。このビジネスモデルの根本がサブプライムにより問われているわけで、実に根は深い問題になってきた。

昨日、某通信社の方から電話取材で、今年後半のFRB利下げ再開の可能性ありとの見解に変わりませんかと念を押されたので、上述した今の切迫した状況を見るに、原油高=インフレ予防も大事だが、最後は危機回避に政策優先順位が行くと考え、"変わっておりません"と答えた。

金価格は945ドルまで続騰したが、その背景には 上述のようなマクロ環境がじわじわ効いていると思う。

さらに、実体経済悪化の象徴がGMだ。破たんの噂がしきりに流れる。B-word(忌み言葉の言い方で、bankrupt=破産という単語のイニシャルを取ったもの)がマーケットで囁かれる。メリルリンチはレポートでB-wordがnot impossible(不可能ではない)と表現。
同社の年間損失を見ると、
2005年 約1兆円
2006年 約2000億円
2007年 約3兆9千億円

今や、6年間金利ゼロキャンペーンという通販みたいなキャンペーン張ったりして必死である。でも、大型車から燃料効率良い車種への生産体制移行には最低3年かかる。破たん説が生まれる状況がここにある。でも政府が黙ってfail(破たん)させるはずもないよね。破たんの確率は低いが、マーケットにそれだけ不安、恐怖心理が支配しているという例として受け止めるべきだろう。(どうも最後まで横文字が多かったと反省。仕事上、NY市場との密度の濃いやりとりが続いているので許して!疲労もピークで、頭の中は日本語・英語ちゃんぽんのウニ状態...。でも、ビッグバンⅡの最先端に居るという実感が気持ちの支え)。

2008年