豊島逸夫の手帖

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米デフォルト懸念でも有事には米ドル選好

2013年10月9日

米国債務上限引き上げのDデイ10月17日が近づくにつれ、国際金融市場では米ドル選好が強まっている。有事のドルは健在なのだ。
例えば、手持ちの円やユーロを短期貸しして、米ドルを借りる、という「スワップ」取引のレートを見ると、米ドルに対するプレミアムが急上昇している。
Dデイ前後には、銀行間取引市場も疑心暗鬼になり、流動性が枯渇する信用収縮が予想される。通常の短期米ドル調達が困難になると、外為市場で他通貨と米ドルを「スワップ」するという手段で、流動性危機を乗り越えようとのインセンティブが働くわけだ。

そもそも、通貨には「価値保存」機能と「決済手段」機能がある。
そこで、米ドルは国際基軸通貨ゆえ世界的に決済通貨として使われてきた。この決済機能は、国際金融システムに組み込まれているので、米デフォルト懸念が勃発しても、当面変わることはない。
しかし、米ドルの価値保存機能には疑念が強まっている。とはいえ、米ドルに代わる市場規模を持つ代替通貨も見当たらない。結局は「赤信号も皆で渡れば怖くない」という心理が働き、米10年債は「手放したいのはやまやまなれど、次に草鞋を脱ぐ宿も見つからない」状況でしぶしぶ保有が継続される。
ただし、短期の米国債、特に10月中に満期を迎える短期債は敬遠され売られている。現金に近い流動性を持つ「安全資産」として保有してきた銀行など機関投資家が、上記のスワップによる米ドル調達などに切り換えているからだ。

公的債務の返済不能に陥るリスクが意識されている国の通貨への短期的需要が高まるという現象は、一見理解しずらいが、国際決済通貨としての米ドルへの流動性選好が高まっているということなのだ。
今後、流動性危機がこうじると、FRBが緊急ドル供給措置を講じることになろう。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、今日にもオバマ大統領が次期FRB議長としてイエレン現副議長を指名、発表と報じている。このタイミングで、当面の市場の流動性不安を少しでも和らげようとの配慮であろうか。
しかし、流動性(liquidity)と、米国の債務返済能力(solvency)は、別問題である。

さて、昨日は、ポール・ウォーカー前GFMS CEOとパネルディスカッションやりました。金販売店の人たちから亀井・池水や商社・鉱山会社のプロまで業界の多くが聴衆。
自由の身になった彼は、結構過激な発言で、金価格は1000ドル以下に下がる、と語ったので、私は、短期弱気なれど、そこまで弱気にはなれない、長期は強気と反論。結局、二次的供給源のリサイクルからの供給増と、中国需要減の見方で意見が分かれました。
私は、金が高値になればリサイクルが増えることは同意しますが、中国需要は金解禁されこれからが本番と見ます。自分が中国金市場の創設・発展に直接関わってきたので、実態を見てきているから。
今日も、日経マネー誌掲載用の対談で二人のがちんこをやるので、もっと深掘りしたいと思います。こういう健全なディベートは大いに歓迎するところです。

2013年