2013年7月30日
これは7月22日の日経朝刊に掲載された原稿です。↓
金価格が急落している。世界標準のロンドン金価格(後場建値)で見ると、今年1月2日の1693ドルから7月16日時点で1291ドルまで下げている。同期間の国内店頭小売価格も一時は5000円の大台を突破したが、4300円台にまで下落した。
ここで投資家が一番知りたいことは、どこまで下がるのか、金高騰はバブルだったのか、ということだろう。
結論から言うと、短期的には軟調傾向だが、長期的に見れば、現在の金価格は底値圏にあると見る。
その最大の理由が金の生産コスト。
株価は暴落すると「底なし」の懸念が生じるが、金価格は生産コスト以下に下がれば金鉱山が減産ないしは閉山に動くので、新規生産量が減少する。その結果、生産コストが価格レンジの下限のベンチマークと見られるからだ。
その生産コストだが、2012年の総コスト(鉱山会社が長期操業維持可能なコスト)は1211ドルとなっている。(トムソン・ロイターGFMS社調べ)。1990年代の総生産コストは200-300ドル台であったから、この10年ほどで5倍に急上昇しているわけである。それだけ採掘に費用がかかるということは、露天掘りなどはとうの昔に掘り尽くされ、未開拓地域の地下3000メートルなど苛酷な自然環境の中での操業を強いられているからだ。ちなみに、金の埋蔵量の多くは海底にあり、金価格が1万ドルになっても鉱山会社としては採算に乗らないといわれる。原油ならば液体なのでドリル作業により噴出してくれるが、金鉱石は固体で、しかも1トンの鉱石から2-3グラム抽出できれば御の字の世界だからだ。
更に、安値圏では、世界的な「買い取りショップ」を通じた金のリサイクル(市場への還流)も急減する。一方、需要サイドを見れば、宝飾品などの実需は安値買いで増加する。その結果、需給は締まり、時間をかけて金価格の底値圏が形成されてゆく。
いっぽう、当面の金価格動向については、やはりマクロ経済要因とニューヨーク市場に注目する必要がある。
そこで金価格を押下げている最大の要因は、やはり米国の量的緩和縮小予測だ。緩和マネーの金市場からの流出により、バブルっぽい「浮動株主」的なファンドなどの投機筋が市場から退出している。その結果、安値圏では長期保有の非バブル的「安定株主」が残ることで、市場の体質はメタボな部分が削ぎ落され筋肉質に変わりつつある。その非バブル的部分の代表格が公的部門の金購入・保有であろう。2000年からリーマンショック前の2007年の期間で中央銀行セクターは保有する外貨準備としての金を年平均519トン売却してきた。しかし、ドル・ユーロ不安が募るなかで、外貨準備の通貨分散に動き始め、「無国籍通貨」=金の購入者に転じた。2011年には457トン、2012年には532トンの「買い越し」を記録しているのだ。この売り越しから買い越しへの絶対差は1000トン以上にのぼる。年間金生産量が2861トン(2012年)の市場規模ゆえ、この絶対差は需給の景色を変えるインパクトがある。
なお、新興国経済の変調も金価格下落要因となっている。筆者は中国の商業銀行の貴金属部アドバイザリーを務めてきたが、中国人投資家の金購入も慎重になり、従来に比し金購入目標価格を引き下げてきている。しかし、そもそも金選好度が極めて高い文化ゆえ、金需要の所得弾力性は低い。中国インド経済が減速した2012年でも、この二か国で年間金生産量の57%を買い占めているのだ。金価格のボラティリティー(価格変動)が落ち着くのを待っている状況といえよう。米国が緩和縮小を決定するほどに米国経済が回復すれば、中国インド経済も連動して好転するだろう。
最後に、円建て金価格は、円安が、海外金安を相殺する局面が見られるようになった。
個人投資家へのアドバイスとしては、アベノミクスの成功を信じて日本株を買うと同時に、失敗したときに備え、資産の10%ほどを金で保有することを薦める。2013-2014年は株で攻め、金で守る年である。
さて、先週末は隅田川花火を見にゆきました。
打ち上げ場所のすぐそばにある料亭「壱松」貸切パーティーでした。
屋上で至近距離の花火を見たのですが、開始後30分くらいで、風雨強まり
花火が上から降ってきました。凄い迫力!でも、それで史上初の「中止」となりました。
あとは、屋内で「カラオケパーティー」(笑)。
宴終わって、外に出たら、涼しかった~
それにしても、花見の席どりは桜の下ですけど、花火の席どりは大通りの路肩なんですねぇ。花火が良く見える角度の道には、ずっと青ビニールシートで席どりされてました。