2013年11月14日
13日の米国株式市場は、14日に控えたイエレンFRB副議長の上院銀行委員会での次期FRB議長指名承認公聴会への「期待感」から買われダウも70ドル上昇した。
更に、引け後には、イエレン氏の「準備原稿」の内容も明らかになった。短い声明文ながら、「景気回復をサポートすることが、金融政策正常化への最も確実な道である」「経済危機で失われた損失を取り戻すための道はまだ遠い」などの文面からは、バーナンキ現FRB議長の「非伝統的」金融緩和政策継続のニュアンスが色濃くにじむ。
市場では、イエレン氏のファースト・ネームをとって、「サンタ・ジャネットが早々とクリスマス・プレゼント」などと語られている。
その、イエレン氏は既に、量的緩和政策に批判的な共和党議員たちと個別ミーティングを行っている。
ボブ・コーカー氏(共和党上院議員、テネシー州)は、2010年のイエレン氏FRB副議長指名にも反対投票を投じている。
リチャード・シェルビー氏(共和党上院議員、アラバマ州)も、量的緩和政策の合併症(=インフレ)を懸念する論客だ。
彼らとの厳しい質疑応答の中で、イエレン氏から、「成長重視」と同時に「インフレ・ファイター」としての姿勢も印象づけるコメントが飛び出すと、市場は「早期緩和縮小」の思惑で株・商品売り、債券買いに走る可能性もある。
バーナンキ氏も就任当初は、「自説を曲げて」金融引き締めスタンスを維持し、殊更に「物価安定重視」の姿勢も打ち出した。結果的には、これが、金融危機を悪化させたとの批判も残る。
足元では、先週、予想外の雇用統計改善が明らかになり、市場は「緩和早期縮小」に再び傾きつつある。このタイミングでのイエレン氏議会初お目見えだけに、マーケットは神経質にならざるを得ない。
しかし、「準備原稿」の趣旨を更に詳細に説明するような公聴会での言動は現実的には考えにくい。
そもそも、中央銀行は、「物価安定」と「経済成長」の二つの政策目標(いわゆるデュアル・マンデート)を満たすための綱渡りを強いられる宿命になる。「ミッション・インポシブル」と言われるほど至難の業だ。これは、誰が、中央銀行の長になっても同じこと。
結局は、その二つの政策目標のどちらに優先順位を置く考えを持つかで、という点が重要になる。
イエレン氏は、生粋の生え抜き中央銀行家だ。その鍛え上げられたバランス感覚で、仮に当初インフレ・ファイターとしてのポーズも採ったとしても、最終的には「経済成長重視」の緩和政策維持を貫くと、市場は期待も込めて予測している。
先読みすれば、12月でも来年3月でも、或いは6月でも、いずれは「有事対応の非伝統的金融政策」の幕引きは不可避である。イエレン氏の金融政策運営は、「フォワード・ガイダンス」重視となろう。「緩和縮小」から利上げなど「引き締め」への転換条件と時期を予め明示する「市場とのコミュニケーション」がイエレンFRBの最大のマンデート(任務)になることは間違いない。
超ハト派のレッテルを貼られた人物が、引き締めのボタンを押す役回りとなるところに、新FRB議長の葛藤が透けて見える。
なお、12日付け日経コラム「4つの驚き、ヘッジファンドが円売り加速」のなかで、「超ハト派といわれるイエレン氏が議会公聴会で緩和継続=ドル安要因を示唆するも予想される。一気に100円の大台を突破する状況ではない」と書いたが、やはりで値固め局面となりそうだ。
金価格は、株と同様に「イエレン熱烈歓迎」の反応で、1280ドル台まで反騰している。(上がったといっても1200ドル台でのせめぎ合いだけどね。)
昨日は、久し振りに、御徒町で講演してきました。
東京商工会議所主催の研修会だけど、場所柄、宝飾関係者が圧倒的。質疑応答も賑やかでした。私にとっては、昔、金業界に居た頃の友人知人たちの顔も多くみられ、「ホーム・ゲーム」の気安さがありましたね(笑)。宝飾業界の創業者たちは、個性があって、付き合っていて楽しい方々が多い。今は、仕事上直接関係ないけど、未だに個人的に家族ぐるみで付き合っている方も少なくないのです。
それから、今日の日経朝刊「経済教室」面で「金市場と世界経済」(存在感増す中国)の志田編集論説委員の原稿が載っています。
その中で、拙著「金を通して世界を読む」が紹介されていますが、思うに、5年前に書いた著書でも、基本的な事は変わっていないですね。笑えるのは、そこに書かれる相場の1000ドルとか1200ドルという数字が、1900ドルになったときは、「過去の話」になっていたのが、5年後には、鮮度が落ちてない数字になってしまった、ということ。歴史は繰り返す。。。か。。。