豊島逸夫の手帖

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分娩室からドル円トレード 米女性ヘッジファンド

2013年3月13日

ウオール街では「女性経営幹部」の話題が相次ぎ、本欄でも「米ヤフーの在宅勤務禁止論争、日本の企業風土では?」(3月4日づけ)、そして「午後5時半退社の米フェイスブック女性COO」(3月12日)と書いてきたが、ヘッジファンド業界でも、女性ファンドマネージャーの進出が話題になっている。
最近のヘッジファンド・コンファレンスで、女性のチーフ・インベストメント・オフィサーが運用する、或いは、ファンド幹部に複数の女性がいる67のヘッジファンドの運用実績をインデックス化した結果が発表されている。
それによると、過去5年間で、女性ヘッジファンドのリターンは20%と、ヘッジファンド全体の14%をアウトパフォームしているという。
代表的存在として、昨年からしばしばヘッジファンド・コンファレンスの講演者として登場している女性のキャスリーン・ケリー氏というクイーン・アンズ・ゲイトというヘッジファンドのCIO(チーフ・インベストメント・オフィサー)がいる。FED勤務後、名門ヘッジファンドのポール・チューダーで働き、独立した。グローバル・マクロ系で、マクロ経済の大きな動きに乗って株、通貨、商品で運用する。
彼女は、「女性は一つの運用方針に結婚の如く執着することはない。見切りも早い。更に、ヘッジファンドという男性優位の世界への女性参入はハードルも高いので、必然的に優秀な女性のみが入ってくる。自分のエゴへの執着も男性より希薄である。」と説明している。
その彼女が、フェイスブック女性COOサンドバーグ氏の本出版関連報道で、米国経済チャンネルに生出演していた。

そこでの発言は「私はCIOとしてファンドマネージャーの面接も担当してきたが、まだまだ女性候補者は男性の20分の1程度。その背景は、今ヘッジファンド業界が求める理系の人材が女性には少ないからだ。これからは、女子がもっと数学系に進むべき。」というもの。
筆者が興味深く聞いたのは、彼女のエピソードで、長男出産の際に、分娩室に入ってから時間がかかり、その間に、ドル円のトレードをした、という最近の話。
トレーディングは24時間動くマーケット相手の仕事ゆえ、自宅でも常に臨戦態勢。しかし、自らがポジションを張りに動くのは一日でもそう頻繁に起こるわけではない。その間に育児や家事もこなせるので、女性のワーク・ライフ・バランスには適合しやすい業種だといえるかもしれない。これは、筆者の実体験に基づく一考察。
ちなみに、彼女は昨年のヘッジファンド・コンファレンスで「プラチナ空売り」を推奨して、見事に当てた。南アのプラチナ鉱山ストライキで値が吹いているときであったが、冷静に欧州中国景気減速の影響で自動車排ガス清浄化触媒需要が伸び悩むことを重視したのだ。

そして、今、「金をショート=空売り」しているという。
理由は金ETFからの大量資金流出。この2月には500万オンスもの解約があったが、金価格が1600ドルを割り込み、まだunder water(含み損を抱える)のポジションが多く、今後、更に1000万オンス程度の金ETF売りが出ると予測する。金から株へのマネー回帰を象徴する現象だ。
しかし、中国の下値買いは根強く、今の価格水準から新規の空売りをかけるのは、かなり冒険だね~。私ならやらない、というか怖くてやれないね。

2013年