豊島逸夫の手帖

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防空識別圏で意識される中国版テーパリングとは?

2013年12月17日

FRBによる国債買い取りプログラム縮小が市場のメイン・テーマとなり、米国財政危機により米国債デフォルトをちらつかせる瀬戸際政策が採られた10月に、中国は、米国債保有を2011年7月以来の最高水準にまで買い上げていた。
米国財務省が毎月発表している米国債国別保有量データによると、10月末時点での中国の米国債保有量は、1兆3045億ドルと、前月比0.8%増を記録した。
中国の外貨準備は3兆6600億ドルまで膨張しているので、財政不安をかかえ「安全資産」とは言い難い米国債を買い続けざるを得ない。「安全性への逃避」ではなく「流動性への逃避」現象である。
なお、米国債保有第二位の日本は1兆1744億ドルと前月比0.3%減少させている。

筆者の注目は、11月に唐突に防空識別圏を設定した国が、10月に米国債購入を増加させていた、という事実だ。
中国の巨額米国債保有は、G2米中の「持ちつ持たれつ」関係を象徴する「かすがい」である。
その額を増加させることは、習近平国家主席による経済面での米国との関係維持の意志表示ともいえる。
その矢先の一方的防空圏設定。
「これで恥辱を晴らした」と語る、米軍機に対する中国スクランブル機パイロットの言葉を、習近平は、複雑な思いで聞いたことだろう。
ここに、中国共産党と軍の隙間風が透ける。
防空圏設定は「地政学的=ジオ・ポリティカル」な問題だが、米国債保有は、「地勢経済的=ジオ・エコノミクス」的な問題である。
万が一、「不測の事態」が生じ、日中有事ともなれば、中国保有の米国債は米国により凍結されるリスクがあるからだ。
いっぽう、米国の視点で見れば、中国が保有米国債の購入縮小或いは売却をちらつかせることで、米国債券市場が乱高下するリスクがある。ただでさえ、テーパリングでマーケットが神経質になっている時期に、最も避けたい状況だ。
米中間の地勢経済的リスクとして中国版テーパリングの可能性も考えておくべきだろう。

いやー、昨晩の日経CNBC生出演は参りました。喉がカラカラ状態で、しかも、スタジオ内も乾燥状態という状況で、冒頭、声が出なくなった。こんなこともあろうかと思って、喉にやさしい花梨茶ときんかん茶を持参していたので、熱湯に溶かして、スタジオが画面に映らない時を見計らって、それを飲んで、なんとか回復した。
やっぱり腹式呼吸で話す習慣をつけねば。

2013年