2013年2月25日
"厚い"と言われる95円の壁突破には、充分のエネルギーを感じる顔ぶれだ。
更に、95円から100円までの道程では、各国通貨当局と市場を納得させられる「通貨外交」と「市場とのコミュニケーション」の合わせ技が最も重要になる。そこで重視されるのが、「国際金融マフィアの浸透度」と「英語でのコミュニケーション・スキル」である。
もし、円独歩安で100円まで円安が突進すれば、特にアジア諸国中心に「近隣窮乏化政策」の批判が高まろう。アジア通貨当局の理解は欠かせない。
以上を勘案すれば、流暢な英語で通貨当局や外国メディアとわたりあえる能力を持つアジア開銀総裁の黒田氏は、「通貨戦争懸念をやわらげつつ、100円を実現できる人物」と言えよう。
副総裁候補に浮上している岩田規久男学習院大学教授は、筋金入りのインフレ・ターゲット論者だが、実務経験には乏しい。そこで、実務経験豊かで、バーゼルの定期的中銀会合出席者の常連である中曽日銀理事との組み合わせは、補完的な総裁サポート布陣と言えよう。
総じて、海外ではマーケット・フレンドリー(市場に歓迎される)な人選だと感じる。
岩田一政氏が外れたことで、100円への強力な起爆剤とされた外債購入案は後退した感はあるかもしれない。
しかし、この日銀総裁・副総裁人事案の「三本の矢」の複合的効果は期待できる。
インフレ・ターゲットといえばこの人といわれる学者が、「物価上昇率2%懐疑説」を抑え込む。特に欧米市場に強い日銀独立性に関する疑義に関しては、二人の国際派がそれぞれ構築してきたネットワークを通じ、共同でジックリ説明にあたる。
日銀本店上層階には、丸の内の老舗レストランが委託された賓客用食堂がある。そこは、本石町と民間のビジネス街丸の内の空気が融合する場だ。民間各分野の専門家と情報交換の場でもある。
日銀は「金価格は金融政策の通信簿」と公言するくらいなので、筆者も招かれ金市場について「御進講」申し上げたことがある。中曽氏率いるチームとの「市場とのコミュニケーション」の機会であった。黒田氏が、このゲスト用レストランをフルに活用して、来日する通貨マフィア・海外市場関係者と膝突き合わせ会話するイメージが沸々と湧いてくる。
足元で市場内を見れば調整感が強い円安相場だが、中長期的に100円への具体的ロードマップを感じる人選と見た。
さて、今晩は、若者向けラジオ局J-WAVEで8時50分くらいから生出演して30分ほど語ります。新聞のテレビラジオ面では「通貨安競争とは何なのか?国際経済の専門家迎え」となっています。日銀新総裁報道直後なのでタイムリーな話題になりました。