2013年4月26日
25日のニューヨーク市場で金価格は2%以上続騰した。
1600ドル台から1300ドルギリギリまで急落した後、反騰に転じていたが、足元では1460ドル台まで値を戻している。
市場は先進国ファンドの売り攻勢に新興国が買い向かう構図であったが、安値圏での中国・インド勢の記録的現物買いが押し切ったカタチだ。ファンドは先物・ETFを売って買ってのゼロサム・ゲームだが、文化的に金選好度の高い中国・インドの買いは現物長期保有なので買い放し。最後に残るのは後者なのだ。
4月24日付け日経マネーのコラム「インド系男性の金買い、熱気あふれる現場から」のレポートで詳述したが、中国・インドの二か国で経済減速中の2012年でも年間金生産量の57%を買い占めている。文化的宗教的背景に根差す金需要は、所得弾力性が低いのだ。
更に、新興国の中央銀行が外貨準備として金を購入する傾向が続いていることが、IMF統計で確認されたことも市場のセンチメントを好転させた。
3月にロシア・トルコなどが金準備増強していたことがIMF統計で明らかになったのだ。
この問題は構造的要因だ。俯瞰すれば、90年代からリーマンショック前までは、公的部門(中央銀行)が毎年、外貨準備で保有する金を年間500トン前後売却していた。一時は、欧州の主要中央銀行が金の大量売却に走り、1999年には金価格が250ドルの底値をつけた経緯もある。
しかし、リーマンショック・欧州債務危機でドル・ユーロ不安が顕在化するや、特に新興国の中央銀行が外貨準備のリスク分散としてドル・ユーロの保有割合を減らし、「無国籍通貨」=金の割合を増やすようになった。
その結果、2012年には公的部門が534トンの「買い越し」を記録している。年間500トン前後の「売り越し」が500トン強の「買い越し」に転じたことは、絶対差で1000トンの変化となる。年間金生産量が近年は2800トンの市場で、1000トン規模の変動は、需給の景色を変える。その傾向が最新IMF統計で再確認されたので、市場への心理的インパクトが大きかったのだ。
新興国の民間金現物長期保有と外貨準備としての金購入は、とてもバブルとはいえない要因だ。
今回の金急落の過程ではキプロスの公的保有金10トン売却案なども要因として挙げられた。これが前例となり、スペイン・イタリアなどの南欧債務国の金売却を連想させたからだ。しかし、仮に欧州から公的部門の売りが出ても、新興国の公的部門の買いが容易に吸収することになる。
なお、24日付け本欄で触れたことだが、ゴールドマン・サックスが金売り推奨を撤回して、3か月金価格予測を1530ドルにまで引き上げたことも効いている。同社の金売り推奨(金価格1500ドル台の時点で1450ドル目標)が、今回の金急落の引き金となった、と報道されてきたからだ。
更に、24日には金ETFを大量保有(94トン)する大手ヘッジファンドのポールソン&カンパニーが、顧客向け説明会で、「短期的価格変動に関わらず、金保有は継続」を明言したことも市場の懸念を軽減させた。特に金ETFからの大量マネー流出も金急落要因とされ、最大の保有者ポールソンの動向が気になるタイミングでの発言ゆえ、これも効いた。
金市場でも「5月売り逃げ」はしばしば語られるところだが、今年に関しては、一月早く示現し、一足先に終息に向かっているようだ。
なお、中期的には、米国量的緩和が出口模索に転じると、過剰流動性相場も出口を意識するようになるので、2014年にかけては国際金価格が下落トレンドに入ると筆者は見ている。その意味では、来週のFOMCが金市場でも重要視される。
一方、国内金価格は円安トレンドの中で、海外相場に比し、為替要因により「下げにくく上げやすい」状況が続きそうだ。
さて、明日から連休入り。
連休中に相場大変動でもあれば、ツイッタ―か日経電子版「金つぶ」に書きます。日米株価が早いペースで上げているので、それこそ、タイミング的に5月売りが出やすい市場環境ですしね。
5月にはキプロスやトルコへのテレビ収録にも行きます。