豊島逸夫の手帖

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中国が米国債を大量売却する日

2013年10月28日

2002年以来、中国の取引所と銀行の外為貴金属関連のアドバイザリー業務に従事してきたので、中国市場開放の過程をインサイド(内側)から見てきた。
その立場から、中国の米国債保有動向に注目している。米国財政問題の解決が先送りされるなかで、中国は米国債を持ち続けるのだろうか。二位の日本は、どうするのか、というトピックなども北京や上海でしばしば遭遇する質問だ。

まず統計的に見ると、外国人の米国債保有一位中国と二位日本の保有額推移は以下の通りだ。
(単位:ドル)

2013年8月 13年7月 12年8月
中国 1兆2681億 1兆2793億 1兆1552億
日本 1兆1491億 1兆1354億 1兆1209億


日本が一年前には一位に肉薄するほど、二位との差が縮まったが、今年に入り、その差が再び拡大した。
しかし、直近では、8月に前月比で中国は減少、日本は増加している。米国債務上限引き上げ問題が顕在化した10月以降の動向が注目されるところだ。

俯瞰すると、中国の外貨準備高は今年9月末で3兆6600億ドルと過去最高を更新した。(日本は1兆2734億ドル)
その7割近くが米ドルといわれる。兆ドル規模の流動性の受け皿としては、米国債市場以外には、考えられないからだ。
中国は外貨準備運用先として米ドルに依存し、米国は公的債務の引き受け先を中国に依存する、という米中「仮面夫婦」関係は当分続けざるを得ない。

しかし、本来は、中国が稼いだマネーは、自国民の生活向上のために使うことが望ましい。輸出依存型から内需・消費先導型の経済モデルに転換できれば、マネーは国内金融証券市場に流れ、バブルではない健全な経済成長をファイナンス(賄う)することができる。
とはいえ、実態は、多くの中国国民が、年金・社会福祉などのセーフティーネット欠如を懸念し、将来に備え貯蓄する傾向が根強い。
基軸通貨ドルに対抗して、人民元の国際化を進め、人民元決済を促進する動きも顕在化しているが、まだ端緒についたばかりだ。先は長い。

結局、中国経済の構造改革なくして中国の米国債依存からの脱皮は考えられない。
米国議会のネジレ現象が選挙区設定など構造的な要因に根差す以上、財務不安の長期化は不可避だ。しかし、中国と日本が米国債市場を支える構造も変わらないだろう。
FRBが米国債追加購入を縮小・終了させると、中国・日本への依存は更に強まることになる。

今週は、FOMCが開催され、市場の関心も、米国財務政策から金融政策へシフト中だ。
中国にとっても、米国が緩和縮小すれば米国債リスクが高まり、緩和継続すればドル安・人民元高圧力がかかり、悩ましい状況が続きそうだ。
なお、中国の外貨準備における金の割合もドルからの分散として緩やかに継続するだろう。

2013年