2013年9月19日
18日付け日経電子版金つぶに「FOMC初日、緩和縮小延期の可能性浮上」との見出しで書いたキッカケは、現地で旧知のディーラー(複数)が呟いた「not comfortable」(気持ち悪い)の一言だった。
大手の投資銀行勤務のディーラーたちゆえ、house view(会社としての公的見解)に従い「今回のFOMCで緩和縮小150億ドル」などとtaper(緩和縮小)を前提にポジションを張り、外に対してもコメントしているが、それはあくまで「建前」。「本音」は、殆どの市場参加者が同方向を向いているので、どうも気持ち悪い、という意味であった。
NYSE(NY証券取引所)で対談した著名投資家ジム・ロジャーズ氏も、常々「crowded混み合った」市場は好まぬ、と語る。
本能的にプロはポジションが一方向に傾くと、それをreverse indicator(反面教師)と見るものだ。
FOMC声明発表前日のNY市場はまさにtaperトーク一色であった。加えて、債券市場では、10年債利回りが3%近くまで上昇していることも「気持ち悪い」。失業率低下も、労働参加率減少のため「改善」とは言い難い。米国マクロ経済の実態について現地で議論すると、かなり厳しい見方も多いのに、taperに関してはほぼ全員が「あり」の前提で語っていた。
こういう認識上のギャップは、やはり現地の市場の空気を吸わないと、分からないもの。組織のhouse viewに囚われない本音は活字にもなりにくい。ベン・バーナンキ氏も、かなりの相場師とお見受けした。とはいえ、このまま2014年1月に退任では、「大学教授時代に景気浮揚のためにはドル札をヘリコプターからばら撒けばよい、と語ったことからヘリコプター・ベンの異名をとり、それを実践した人物」で終わってしまう。やはり、任期の最後には、ドルのばら撒きを減らすなり、回収の予定をフォワード・ガイダンスとして語るなりして、名を残したいのではないか。経済成長重視の非伝統的金融政策を有事対応で実行したが、一方で中央銀行のトップ=「通貨の番人」としてのケジメもあろう。12月のFOMCでは、市場が疑心暗鬼になるだろうが、そこで、堂々と「緩和縮小宣言」すれば、まさに有終の花道を飾ることになるだろう。
なお、金は、1370ドル台まで大きく買われている。